【インタビュー】オウンドメディアを集客につなげる。 株式会社スタディーハッカーが挑んだSEO戦略の軌跡

時短型英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」(以下:ENGLISH COMPANY)を手掛ける株式会社スタディーハッカーは、自身が運営するオウンドメディア「STUDY HACKER(スタディーハッカー)」を活用して集客を行ってきました。

「STUDY HACKER」は、勉強法や体験談といった学びに関するコンテンツを月70本ほど更新しており、2020年1月には月間200万トラフィックを突破。サービスサイトへの送客やコンバージョンに大きく貢献しています。(2020年6月には月間300万トラフィックを突破しました)

スタディーハッカー社を押し上げる存在である「STUDY HACKER」は、どのような経緯で立ち上がり、グロースに至るまでの課題をどう乗り越えてきたのでしょうか。「STUDY HACKER」のグロースに携わったナイルの渡邉と小熊ともに、株式会社スタディーハッカー代表取締役社長 岡健作氏と「STUDY HACKER」編集長の清野祐太氏に話を聞きました。

 株式会社スタディーハッカー_アイキャッチ

写真左:株式会社スタディーハッカー代表取締役社長 岡健作氏
写真右:「STUDY HACKER」編集長 清野祐太氏

ナイル株式会社_渡邉・小熊写真左:ナイル株式会社 渡邉慎平
写真右:ナイル株式会社 小熊千遥

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「KPIやKGIはない」伸びた記事を見極めて次の一手を打つ

――まずは「STUDY HACKER」を立ち上げた経緯からお聞かせください

株式会社スタディーハッカー代表取締役社長 岡健作氏(以下、岡):予備校部門への集客を目的にメディアを立ち上げたのが、2013年ごろですね。当時はキュレーションメディアが盛り上がっていたころで、弊社も教育系スマホアプリのキュレーションをやろうとしたんです。ただ、当時そもそもすぐれた教育系アプリが多く存在していたわけではなかったため、キュレーション、つまりたくさんの情報の中から有益なものを紹介していくということができませんでした。

そこで当時、弊社の予備校部門には東大生や京大生の学生アルバイトが100人以上在籍していたことから、対象を教育系のアプリから紙の参考書に変更したほうがいいのでは、と舵を切りました。そこから勉強法の記事が伸び始めました。

ナイル株式会社 渡邉慎平(以下、渡邉):当時はクラウドソーシングの登場もあり、キュレーションメディアはとにかく記事数を増やす流れがありましたが、そうした「物量勝負」はやりたくない、というスタンスをしっかり持たれていましたよね。

岡:そうですね。塾のメディアで、粗製乱造が起きればマイナスイメージになりますから。ちゃんとした記事を提供していきたい、という思いはありました。

 

――「STUDY HACKER」は、社会人向けの「STUDY HACKER」と、学生向けの「STUDY HACKER for Students」(現名称:大学受験ハッカー)に分かれた経緯があります。学生向けの参考書レビューサイトから、社会人にもターゲットを広げたのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

岡:先ほど「勉強法の記事が伸びた」とお話ししましたが、伸びたのは英語や数学といった科目ごとの勉強法ではなく、「いかに学習を継続するか」であるとか「学習に適した環境は?」といった、学習内容そのものより少し周辺的な記事だったんです。Facebookからの流入も伸びていて、社会人からの反応も良かった。これなら社会人向けの記事も伸ばしていける、と手応えを感じ、社会人向けの記事を増やしていきました。

株式会社スタディーハッカー代表取締役社長_岡さま

渡邉:社会人向けと学生向けにコンテンツを切り分ける際は、キーワードやトラフィックが食い合わないようにサイト構造を再検討しました。また、学生や先生が記事を執筆していたので、SEOのレギュレーションをどう作るか、という話も多かったですね。

 

――「STUDY HACKER」と「STUDY HACKER for Students」には、どんなKPIやKGIを設定していたのでしょうか?

岡:実は、KPIやKGIに相当するものはありません。たくさん手を打って、成果が生まれたものを伸ばす、という方針で動いています。先ほどの社会人向けの記事を増やした一件もそうですし、短期集中型の英語ジムである「ENGLISH COMPANY」も、社会人向けの記事をきっかけに生まれたものです。「ENGLISH COMPANY」に送客するためにメディアを立ち上げたわけではなく、メディアを伸ばしていった結果、スキルアップ指向のある社会人を集めることができた。その方たちに対して、弊社がもっていた英語教育のアセットをご提供するという形で実現したのです。

渡邉:大変興味深いですよね。だいたいのWebメディアは、UUやPVを伸ばして広告収益を上げるか、リアルビジネスに送客する入口として機能するかのどちらか。ユーザを見つつトライアルを続けて、メディアもサービスも発展していけるなんて、なかなか実現できないことだと思います。

ナイル株式会社_渡邉

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ストックコンテンツ不足やユーザ離脱を解決に導いた「施策」の中身

――「STUDY HACKER」がある程度グロースしてからは、どんな課題があったのでしょうか。

岡:「3ヶ月でTOEICを300点伸ばしました」のような事例コンテンツから送客できたり、たまにヒット記事が出て知名度向上につながったりしていたのですが、結果的に「たくさん記事を出してなんとかする」というモデルになっていました。せっかく記事を作っているのに、読まれない記事が多いのではもったいない。そもそも量に頼るつもりはなかったので、ちゃんとSEOなどをお願いしよう、と。

渡邉:当時はSNSでの集客がメインで、コラム系コンテンツがストックコンテンツとして機能できていなかったんです。どういうキーワードを狙いにいけばストックコンテンツとして長い期間読んでもらえる記事になるのか、SEOで集客できる仕組み作りが必要でした。過去に公開した記事でもある程度ストックされるよう、タグ付けやカテゴライズの再検討も行っています。

もうひとつの課題として、ヒット記事でも読み終わったユーザが離脱してしまい、送客につながらない、というのもありました。分析すると「PVは少なくてもコンバージョンが高い記事」があることがわかり、関連記事からコンバージョン率が高い記事に飛ばす、コンバージョン率が高い記事をリライトしてSEOを強化するなど、集客したユーザーをサービスサイトに送客する施策改善も行いました。

「STUDY HACKER」編集長 清野祐太氏(以下、清野):私が「STUDY HACKER」の編集長を任されたのは2017年の夏ごろで、ちょうどその頃からストックコンテンツを増やすために、勉強系の検索流入を引ける記事を少しずつ作り、徐々に数字が伸びていきました。ナイルさんからは、どういう視点でキーワードを見るべきか、競合の記事をどう調査すればいいか、記事構成案をどう固めるかなど、運用ノウハウを共有いただいて本当に助かりました。

「STUDY HACKER」編集長 清野さま

渡邉:逆に、こちらは受験や英語教育の知識はないので、「ENGLISH COMPANY」の核であるSLA(第二言語習得研究)や、英語で必要とされる4技能(Listening、Reading、Speaking、Writing)、教育カリキュラムの変化など、色々教えていただきましたよね。SEOの観点でいうと、当時は「4技能」みたいなワードは検索ニーズがなかったんです。でも、今のうちにここは押さえておくべき、という傾向をインプットさせてもらい、それをメディアに活かす、ということをやっていました。 

 

――コンテンツ自体は引き続きスタディーハッカー様内で作られていたのでしょうか。

清野:そうですね。ナイルさんにはSEOの部分でサポートしていただき、コンテンツの内容によって学生やインターン、塾部門の講師に執筆をお願いしていました。SEO記事については私含め編集部で書き、会社としてノウハウを蓄積するためにマニュアル化も進めました。こうした施策が実り、2018年1月には月間100万PVを達成することができました。

SEO記事の量産体制を整え「自社メディアから集客する稀有な存在」に

――2020年1月にはトラフィックが月間200万を超えられました。直近1年間では、どのようなSEO施策を行っていたのでしょうか。

ナイル株式会社 小熊千遥(以下、小熊)「大学名×勉強法」など、勉強法の記事がキーワードとしてかなり上位を獲得できていましたので、そこを強みに、自己啓発や効率化、ライフハックなど領域を広げて、キーワードを狙っていきました。どの分野が特に順位がつきやすいかを調査して、「エンハンシング効果」「睡眠 学習」「テンション 上げる 方法」というように、キーワードを広げていきましたね。

ナイル株式会社_小熊

清野:SEOライターの育成を始めて、2019年夏以降は月10~16本程度のSEO記事を作れる体制としました。提案いただいたキーワードから検索での流入を狙った記事を作り、検索流入も2019年9月からずっと上昇傾向に転じています。

 

――SEOライターの育成は、どのような経緯で行われたのでしょうか。

清野:それまでSEO記事のライティングは編集部で行っていたので、制作できる記事本数に限界があったんです。実際、100万PV到達後も、しばらくは停滞が続いていました。そこで、SEOにかなり詳しくなった編集部メンバーがマニュアルを刷新し、コラム記事を書いていたライター数名を「SEO専任ライター」としてSEO記事執筆を任せるようにしました。育成をはじめて1年ほどが経ち、今ではライターがSEO記事の構成案をゼロから作れるようになりましたので、かなりスムーズにコンテンツを生み出せています。

 

――「STUDY HACKER」による安定した集客から、「ENGLISH COMPANY」などの事業も拡大を続け、2020年4月にはベネッセグループの連結子会社となりました。M&Aの決め手はなんだったのでしょうか。

岡:やはり、理念に共感できたところが大きいですね。我々は社名の通り、スタディーをハックする、学びに科学的な知見を取り込むことで、効率的に学習できるサービスを作ってきました。そもそも、普通の人にとって勉強って面倒くさいものなんです。面倒だからこそ効率的に済ませたい。「ベネッセ(Benesse)」という言葉には「よく生きる」という意味が込められているそうなのですが、普通の人が「よく生きる」ためには、「勉強」という面倒なことだからこそ、効率的な学習をサポートする、まさに我々のような存在が必要なのではないかと。教育系最大手として、長い歴史に裏打ちされた教育観にも多いに共感できましたし、社内でもベネッセへのジョインは非常に好意的に受け止められました。

 

――最後に、これからの展望についてお聞かせください。

岡:オウンドメディアが集客の中心であることや、短期集中の英語ジムというマーケットを作れたという意味で、珍しい存在であると思います。引き続き独自の切り口で事業展開をしていきたいと思っています。社会人領域の教育はこれから伸びていく市場ですので、引き続きシンプルかつ効率のよい学びを実現できればと思います。

 

編集後記
自分が満足できる人生を送るには、社会人も自己学習が必要な時代。自分を奮い立たせて、日々の仕事や家庭と両立し、学習をするのは面倒に感じてしまう人もいるものです。「「よく生きる」ためには、「勉強」という面倒なことだからこそ、効率的な学習をサポートする」という岡さまの言葉にとても共感しました。

また清野さまから、SEOの専門家に適切に頼りながら自社で記事量産/品質維持体制を作っていくことの重要性、地道にライターの教育をされたお話を伺い、改めてオウンドメディアに裏技はなく、正攻法で進めていくことの重要性を実感いたしました。

 本日はお忙しい中、ありがとうございました。

 ※取材はZoomで行い、撮影はそれぞれのオフィスで緊急事態宣言解除後に行ったものです

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この案件・類似案件を担当したメンバー

 加藤 直子

加藤 直子(かとう なおこ)

・主に女性向けメディアや食関連のコンテンツ制作を担当。担当メディアではローンチから約3年で月間200万セッション達成などの実績を持つ
・一般情報誌、ムック本、ウェブメディア等の制作経験があり、コンテンツ制作の造詣が深い

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