月間1.8億PV超え!スマホアプリ情報メディアの成功に至るプロセスと運営方法

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ナイル株式会社が運営するスマホアプリ情報サービス「Appliv(アプリヴ)」と、株式会社エヌリンクスが運営するゲームアプリ攻略サイト「アルテマ」。スマホのアプリを扱うメディアとして、今なお成長を続けている。
メディアが成功に至るまでのプロセスや、メディア運営に対する思想は、いったいどのようなものなのだろうか。そこで今回は、Applivからはナイル株式会社の高階、針替、アルテマからは株式会社エヌリンクスの花井氏、川嶋氏に両メディアの取組みについて話を聞いた。

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100個用意した攻略タイトルを9割消されてしまった

――まずは簡単にお互いのメディアの紹介をお願いします

花井(アルテマ):アルテマはソーシャルゲームの攻略情報を紹介するメディアとして、2015年にスタートしました。攻略Wikiやレビューをはじめ、最近では動画やバーチャルYouTuber(VTuber)の運営など、ゲームに親和性の高いコンテンツも取り扱っています。現在では、月間1.8億PV(ページビュー)を超えています。

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高階(Appliv):Applivはスマホアプリのレビューサイトとして、編集部のレビューとユーザーのレビューを紹介するサービスで、2012年にスタートしました。App StoreやGoogle Playには数十万のアプリが登録されており、日の目を見ないままのアプリがあるのが現状です。いいアプリに光をあてるために、現在約80,000アプリの情報を掲載しています。

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――お互い「スマホアプリのレビューサイト」として、競合する立場にあるのでしょうか?

川嶋(アルテマ):競合という意識はないですね。アルテマはゲームに的をしぼっていますが、Applivさんはすべてのジャンルを扱われていますので。

高階(Appliv):Applivは「どんなアプリをダウンロードしようか」と探すメディアで、アルテマさんは「自分が使っている、遊んでいるゲーム情報を知りたい」というメディアです。つまり、「ダウンロード前」に見るのがApplivで、「ダウンロード後」に見るのがアルテマさん、という差があると思います。

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――Applivが2012年、アルテマが2015年のリリースになりますが、成功の兆しが見えたときのことをお聞かせいただけますか?

針替(Appliv):リリースから半年後、サイト構造を大きく変えたことをきっかけに、検索流入が上向きました。当時は記事を単なるタグで管理していたのですが、階層構造を持ったカテゴリに変えたんです。独自の分類ですべてのアプリをカテゴライズして、階層構造から目的のアプリにたどり着けるようにしました。当時は1,000~1,500カテゴリ程度で、現在は約3,000カテゴリに分類しています。

花井(アルテマ):記事の管理を「タグにするか?カテゴリにするか?」というのは永遠のテーマですよね。

高階(Appliv):大手の不動産ポータルや比較サイトなどは、タグとカテゴリを両方活用することもありますが、だからといって単純にまねをしても失敗する可能性が高いです。ドメインやコンテンツ量など、大手には大手なりのバックボーンがある。そこを無視して、サイトの構造だけまねをしても、コンテンツやリンクを含めたサイト評価が手薄な状態では、メディアの評価はついてきません。うちも実は1回失敗しているんですが、特に自動生成のタグは、楽に運用ができる一方で、コンテンツの重複などの制御ができずに崩壊しやすいリスクがあります。

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川嶋(アルテマ):アルテマはすべてカテゴリで分類していますね。コンテンツを分散させないようカテゴリをしぼり、中身を充実させることで検索キーワード1位を狙う戦略をとりました。

花井(アルテマ):今となっては、格好良く「選択と集中!」みたいに言えますが、実は、私にとって悲しい過去がありまして…。その戦略に行き着く前、メディアの立ち上げ時に、僕らは100タイトル分のコンテンツを作ったのですが、川嶋にその9割消されているんですよ。

――どういうことですか…!?

花井(アルテマ):元々アルテマは、私を含む、社内のゲーム好き3人で始めたんです。攻略サイトとしては後発ですので、ほかの大手攻略サイトを研究してみると、攻略しているのはだいたい20タイトルくらい。ならばと、3人で100タイトルを攻略したんです。

高階(Appliv):1人30タイトル以上ですか。すごいですね。

花井(アルテマ):ところが1ヵ月経っても、PVがまったく伸びない。そこで、SEOに強い川嶋を引き入れたんですが…。今でも覚えています。月曜日に出社したら、僕らが作った攻略記事を川嶋がほぼすべて消していて、サイトには4タイトルしか残っていなかった。さすがにちょっと怒りましたよね(笑)。

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川嶋(アルテマ):アルテマにジョインしてくれと言われたとき、完全に運営を任されたと思ったんです。SEOの観点で大事なのは記事の質で、決して数ではない。自分たちの力量を120%出せるタイトルの中で勝負をしたほうがいいと考えた上での「ほぼ全削除」という判断でした。

花井(アルテマ):とはいえ、しばらくのあいだは、やり方に納得できなかったんですが…(苦笑)。3ヵ月ほど経ったら、劇的に改善しました。数字は雄弁でしたね。それ以降は、川嶋のコントロール下で、濃縮されたコンテンツを作っていき、今では月間1.8億PVまで数字を伸ばしています。

検索結果で済むような薄いコンテンツを作らない

――お話の中で「コンテンツの拡充」がカギになると感じました。コンテンツを拡充させる施策をお聞かせいただけますか。

花井(アルテマ):アルテマは、元々のメンバーのライティング能力が高かったので、このクオリティで誰でも書けるようマニュアルを整備しました。いかに再現性を保つか議論を重ね、1年くらい毎週更新を続けましたね。今ではシステム上に「赤ペン先生」という機能があり、ルールに則った文章でないとアップができないしくみになっています。例えば「体言止め」の使用を禁じていたり、スマホで観覧した際に、文節が長くならないよう見出しごとに文字数の制限があったりします。

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高階(Appliv):Applivもマニュアルを作りましたね。ライティングの本も参考して、どうやったら相手に届くのかを研究しました。このマニュアルに則っているかチェックする機構を作り、ライターをランク分けしています。

花井(アルテマ):私たちと同じですね。

高階(Appliv):私は元々製造業に携わっていたことがあり、マニュアルの考え方は、トヨタの生産方式をベースにしています。考え方には3段階あって、第1段階はマニュアルが存在していること、第2段階はマニュアルに則って全員が均一に生産できること、そして第3段階はマニュアルが常に進化し続けること。望むクオリティにいかに近づけていくか。マニュアルは作るだけで終わりというわけではありません。作ったマニュアルどおりに実行できているかの評価基準やテストをセットで運用して、その結果をマニュアルにまた反映させていく。これを繰り返すことで、組織と成果物のレベルが上がっていきます。

――コンテンツの質を測る基準のひとつに「Googleの検索順位」もあるのではと思います。

高階(Appliv):我々のように、集客チャネルのメインが検索トラフィックであるメディアにとって、Googleの検索順位の変動は気になるところではありますね。アルテマさんは検索アルゴリズムのアップデートに影響を受けることはありますか?

川嶋(アルテマ):毎回、アップデート後は検索順位が上がっていますし、基本的にいい影響しかないと思っています。細かい表記の調整とかはもちろんありますが、パンダ、ペンギンといった品質的なアップデートについては特に気にしていません。

花井(アルテマ):アルテマにとって、いい記事の条件は「検索順位1位」。ユーザーが評価した記事が検索順位1位になると信じています。本質的なコンテンツづくりを続ける限り、Googleは味方だと思っています。

針替(Appliv):検索順位とは異なる話ですが、少し前から、Googleの検索結果に「アプリ」という目立つ枠が出るようになりましたよね。このユニバーサル検索結果のアプリ枠は、App StoreやGoogle Playに直接誘導されてしまうので、サイトへのトラフィックが断たれてしまう。最近のGoogleからは「検索結果だけで問題を解決させよう」という意思を感じます。

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川嶋(アルテマ):わかります。特にゲームの場合は、「ニュース」の枠に他のサイトが表示されたりしますから。この方向で進むと自然検索は減るんじゃないかという危機感はあって、例えば、攻略情報までピンポイントに検索結果に出てしまったら、もうお手上げです。ただ、そこに入り込む隙があるものは、やはり良質なコンテンツでしょう。

高階(Appliv):我々にとっては、「検索結果で済んでしまうような薄いコンテンツを作らない」という話でしょうね。Siriに質問するみたいに、パッと答えがわかるものなら、検索結果で済んだほうが絶対にいい。サイトに遷移して「理解を深める必要があるものだけが上位に表示される」ということになっていくのかもしれません。

メディアを運営する「個」と「組織」

――それぞれのメディアの運営体制はどのようになっているのでしょうか。

花井(アルテマ):アルテマは、リーダーの下にタイトルを束ねるディレクターが30名弱おり、ライターやエンジニア、デザイナーが100名体制で控えています。エンジニアやデザイナーは、必要に応じてメンバーをアサインする形です。

高階(Appliv):Applivは、より少人数でPDCAが回せる体制がベストという考えのもと、「ユニット」と呼ぶ小さな組織を作っています。同じ課題を抱えた人たちがユニットを結成し、予算をつけてプロジェクトを動かします。一定期間が過ぎれば、評価を行い、目標の達成・未達成にかかわらず強制的に解散します。期間を区切らないと、目的と手段が逆転して、意味のないことをダラダラ続けてしまうことになります。現場メンバーに、投資対効果という考え方を、自分事として考えてもらいたいという思いもあり、あえて動的な組織にしています。

花井(アルテマ):なるほど。アルテマは小さな組織というか、「個」の力がまだ強いですね。アルバイトの中には、本当にゲームが好きで、とても優秀な人も多いんです。攻略サイトを作り、レビューチームを作り、バーチャルYouTuberのメディアを作り…と、任せるとどんどん進めていく。ただ、プライベートでもゲームに没頭するために「正社員にはなりたくない」と言われています(笑)。

高階(Appliv):「個」と「組織」どちらの進化が正しいかというわけではなく、個人が活躍できてチームでも動けるのが理想なんでしょうね。

花井(アルテマ):そうありたいですね。

高階(Appliv):メディアが衰退する理由のひとつに「機能の細分化」があると思うんです。メディアが大きくなるにつれ、機能開発やライティングなど、それぞれの機能を担当する人員が細分化されていく。そうなると、本来その事業が持つミッションや目指すべきゴールを忘れてしまう。これは組織にとっても個人にとっても、不幸なことですよね。

花井(アルテマ):その対策のひとつが、先ほどの「ユニット」になるのでしょうか。

針替(Appliv):そうですね。Applivでは、ユニットごとに仮説を立てて、Google オプティマイズ(Googleの提供するABテストツール)を使ったABテストを実施し、結果を分析して数値を改善していくといったPDCAを回しています。社内勉強会を通して、デザイナーや編集もGoogle オプティマイズが使えるようになったので、設定から分析まで一人でどんどんABテストを繰り返して、指標の改善をしてくれる状態になりましたね。

高階(Appliv): ユニットの取組みは試行錯誤の段階で、改良が必要な部分もまだたくさんありますが、確実に社員が「T字型人材」になりつつあると感じています。私の考えているT字型人材とは、自分の専門スキルと併せて、その専門性を最大限発揮できるために必要なスキルも持っている人材という意味です。ライターに営業もしてほしいとはまったく思っていませんが、自分の書いた記事のデータ分析やPRできるスキルなどを持っていたほうが、チームの目標に対して、一人ひとりが与えられるインパクトは大きくなりますよね。自分のやっている業務の成果が、チームやプロダクトの目標に対して、どう影響しているかわからないという状況では、オーナーシップは生まれません。逆に、組織の中で、自分に影響力があると明確に感じられれば、全員が目的に対して、自立自走する組織も可能だと思っています。

――最後に、Appliv、アルテマそれぞれの展望をお聞かせください。

花井(アルテマ):アルテマは「国内ゲーム市場を2倍にする」というビジョンを掲げています。世界のゲーム市場が11兆円あり、日本はそのうちの1兆円です。「ゲームを国内2兆円産業にするためならなんでもやろう」というのが基本的なスタイルです。そのひとつがメディア運営ですし、将来的にはeスポーツに携わってもいいし、ゲーム開発も視野に入れたい。とにかく、ゲーム市場に貢献することを考えています。

川嶋(アルテマ):直近の目標でいえば、ライターの価値向上です。アルテマの攻める範囲を拡張させ、ユーザーを増やすとともに、ライターという職種のブランディングを行うことで、より大きなことにチャレンジできると考えています。新作のレビューやバーチャルYouTuberなど、ゲーム周辺のサービスもさらに展開していければと思っています。

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針替(Appliv):Applivは、アプリのレビューサイトとして6年ほど運営してきましたが、リリース当初と比べて、スマホが普及しきったこともあり、ユーザーがアプリを探すモチベーションが下がっているのではと感じています。それがGoogleの検索結果にも表れているのでしょうし、時流に合わせてコンテンツの見せ方を追求する必要がある。「Applivを一度見てからダウンロードしよう」と思われるよう、新たな価値を模索しているところです。

高階(Appliv):事業部全体でいえば、ApplivによってSEOトラフィックやCGM、分析といった弊社の強みがメディア運営に活かされることが証明されたので、これを他の領域に展開していきたいです。新たに「Applivマンガ」という電子コミックストアを立ち上げており、今後デジタルコンテンツの領域を中心に、さまざまなテーマで多角化できればと考えています。

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【ナイル株式会社 取締役 スマートフォンメディア事業部 事業部長】
 高階良輔(写真一番左)
 「Appliv」「Applivマンガ」を中心に、事業戦略や新規メディア企画・監修に携わる。

【ナイル株式会社 スマートフォンメディア事業部 Applivプロダクトオーナー】
 針替健太(写真左から2番目)
 「Appliv」運営責任者として、約25名のチームを率いる。

【株式会社エヌリンクス 専務取締役 経営企画室室長】
 花井大地(写真一番右)
 「アルテマ」立ち上げメンバー。現在はただゲームをやる人。

【株式会社エヌリンクス マーケティング統括本部 部長】
 川嶋和也(写真右から2番目)
 「アルテマ」運営責任者として、約100名のチームを率いる。


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