カスタマー視点とアナリティクスでSEOはこう変わる
こんにちは、ナイルのデジタルマーケティング戦略顧問に就任した清水 誠です。私の顧問としての取り組みは、専門性を生かしたアドバイスに留まらず、「データとカスタマー視点でビジネスを変えていきたい!」という想いと、「SEOを進化させてビジネスに貢献したい!」というナイル側の想いへの共感に基づいています。今回はその経緯や内容、予定についてご紹介します。
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目次
旧来のSEOの課題
デジタルのビジネスには23年間、制作から編集、開発、サポート、マーケティング、分析まで幅広く携わってきましたが、以下のような課題を感じていたため、SEOに対してはあまり積極的ではありませんでした。
- 棚ぼた的な無料集客効果への安易で過大な期待と依存
- 他のマーケティング施策との連携不足
- 一人ひとりの訪問者に合わせた接客の欠如
- 順位や流入、コンバージョンといった安直で短期的な指標による施策の迷走
Googleやデジタルマーケティングの進化に伴い、「コンテンツがキング」「訪問のインテントが大事」「マイクロモーメント」「検索体験の最適化」とSEOも進化してきたようですが、まだまだ旧来のSEOのみに止まっていることが多いように見受けられます。
とはいえ、批判をしたりべき論を語っていても何も変わりません。ナイルが持つSEOの知見・経験と、私が提唱・推進するコンセプトダイアグラム&カスタマーアナリティクスを掛け合わせることによって、SEOをきっかけとした顧客中心でかつ成果が出るデジタルマーケティングの実現を支援できる体制の強化ができれば、業界にとってインパクトがあるのではないか、と考えて今回の顧問就任に至りました。
検索前後のストーリーを図解で整理・共有する
「検索」という行為は顧客にとっては生活やデジタル体験における一部(瞬間)でしかありません。「どのような意識や期待の変化がきっかけとなってキーワードによる検索という行為に至ったのか」「その検索によって情報に触れた結果、どのような心理状態になったのか?」といった検索前後のコンテクストまで視点を広げて顧客一人ひとりを理解する必要があります。
単に用語の意味を知りたいだけなら、説明文章を読んで満足してサイトを去ることでしょう。課題解決の方法を探しているけれども一部のメジャーなアプローチしか知らない場合は、検索結果のコンテンツを読んで新たなアプローチを発見し、自社の課題を再発見することもあります。たまたま自社が提供するサービスや商品がその解決の役に立つ場合は、それを提示すると成約につながるかもしれません。その提示がまだ時期尚早の場合は、社名やサービス名を覚えておき、半年後に本格的な検討を開始した際に自社のサービスが候補に入るかもしれません。
どのような状態の訪問者にどのタイミングでどのようなコミュニケーションをすることが訪問者にとっても企業にとってもベストなのか、判断した上で適切なチャネルで適切な内容のコミュニケーションをしていく必要があります。
...と正論を主張するのは簡単ですし、「そんなことわかっている」「当たり前なので参考にならない」という方も多いと思います。現実的で実践しやすいアドバイスとして、コミュニケーションのあり方を図解で整理することをオススメします。
単に行動の変化を時系列でつなげるのではなく、企業が戦略に基づいてマーケティングによって狙う顧客の心理の変化を明確にしていくのがポイントです。ユーザー視点に立ち過ぎると、企業が伝えるべきメッセージや行うべき施策の洗い出しが難しくなり、その効果をデータで表現・検証することが難しくなってしまいます。
そのため、コンセプトダイアグラムはUX(ユーザーエクスペリエンス)ではなく、マーケティングの方法論として位置付けられます。描く図はユーザーの実情ではありません。あくまで企業が望む顧客の変化と、それに対して企業はどうコミュニケーションすべきか、というコミュニケーションの戦略マップなのです。
図解には以下のようなメリットがあります。
- 自分の考えを整理できる(実はわかったつもりでわかっていなかったことも自覚できる)
- 描きながら議論すると脱線しにくく、理解が深まる
- 他人に見せながら説明しやすい
- 抽象的なアイデアを後ですぐ思い出せる
このような図解の方法論を「コンセプトダイアグラム」として体系化しています。
参考書籍:コンセプトダイアグラムでわかる [清水式]ビジュアルWeb解析
類似手法に「カスタマージャーニーマップ」がありますが、ユーザーとビジネスのバランスを重視し、コミュニケーション施策の洗い出しと位置づけ整理、データ活用につなげることを目的としている点が大きく異なります。
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図解後はデータで検証を
コンセプトダイアグラムでは、企業が望む顧客のゴール状態に到達するまでの過程を縦と横の軸を使って表現します。「獲得」「売上」「単価」といった企業視点ではなく、「こだわりの強さ」「危機意識」「自己理解」といった顧客視点の心理的な要因(結果ではない)を設定します。
ゴール到達につながる要因を分解すると、到達までの過程(シナリオ)を二次元で表現できるようになります。下だけに移動することもあれば、右だけに進むこともあります。途中で分岐することもあります。つまり、顧客の心理・態度変容のパターン化が可能になります。
そして、このような軸があるからこそ、起こすべき変化のデータ化や、訪問者の状態の特定、さらには、それらのデータに基づいたコミュニケーション設計や、実行、評価、オートメーションが可能になります。このようなデジタルマーケティングにおけるデータ活用のフレームワーク「カスタマーアナリティクス」も体系化を進めています。
SEOはシステム要件、その後の顧客体験が重要
上記のような顧客視点の図解とデータ活用によって、顧客と企業のコミュニケーションを点ではなく線と面で捉えられるようになります。顧客と企業の接点の一つである検索サイトは、どの段階のどのような人が何を目的として利用するのか?SEOによって誘導すべき訪問者のコンテクストが明確になるので、人気キーワードを掛け合わせてトラフィックを稼ぐという短期的な施策に力を入れたものの成果につながらない、といった状況を避けることができます。
また、どのような意識・状態の人にどのタイミングで何をどう伝えるべきなのか?というコミュニケーション戦略を明確にしておけば、訪問後のサイト内の体験も最適化が可能になります。検索経由の訪問者の意図をページ内やサイト内の動きから推定し、ページ内のコンテンツを動的に切り替えることも可能です。メールやソーシャルによってつながりを維持できた場合は、後日の適切なタイミングで適切な内容のメッセージを個別送信することも可能でしょう。ターゲティングや接客、オートメーションのツールは既に、安価でシンプルなものから大規模なものまで幅広く利用可能です。
検索エンジン相手の最適化という意味でのSEOはシステム的なMUST要件でしかなく、それは当然クリアした上で、訪問者一人ひとりに向き合った体験やコミュニケーションを実現するためのマーケティングやコンテンツ施策、データ活用、社内の合意形成や体制構築を進めていく必要があります。
SEO会社はトランスフォーメーションが必要
(ホワイト系の)SEO会社は長期的な取り組みができ、かつコンテンツを重視しているという点で、コンセプトダイアグラムやカスタマーアナリティクスと親和性が高いのではないか、と最近思うようになりました。
ナイルがの従来からの強みであるSEOにコンセプトダイアグラムとカスタマーアナリティクスを掛け合わせることで、クライアント企業のゴール達成につながる顧客体験の設計と構築、その実現に向けた総合的な支援ができる体制を強化したい。その結果としてより多くの事例や人材を創出し、企業理念に根付いた価値のある商品やサービスを提供できる企業が日本でも増えることを支援していきたい、というのが私の願いであり、今回の顧問就任にあたってナイルと共感した価値観でもあります。
参考:ナイルの考え方と取り組みが分かる記事
SEO=「ユーザーにとって役に立つコンテンツを作る」に対する違和感
ユーザーの検索体験を「SEO成果指標」として可視化する方法(概念と準備編)
ナイルからのお知らせ:Webアナリスト仲間募集!
今回、清水氏がデジタルマーケティング戦略顧問に就任した背景や、今行っている取り組みについて執筆してもらいました。上述したとおり、今Webアナリストチームでは、清水氏やSEOコンサルタントと一緒にディスカッションしながら、カスタマーアナリティクスの考え方をサービスに落とし込んだり、Tableauを用いた分析レポートを作成したりと、コンサルティングチームの分析力を上げていくことに日々挑戦しています。
また、普段のコンサルティングにおいても、SEOの分析に限らず、アクセス解析やユーザー調査、ヒートマップ分析などを用いたユーザビリティ改善、CVR改善などを行っています。データから仮説を立て施策立案するのが好きな方、様々なWebサイトのデータをみて視野を広げたい方、新しい分析手法確立に挑戦したい方、分析力を活かしてアナリストチームを一緒に作っていきたい方などは是非、ナイルの採用ページをご覧下さい。
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