どんなコンテンツを作っても、ストーリーがなければ心は動かされない
コンテンツにはストーリーが必要だといわれます。
なぜなら、人はストーリーがなければ心は動かされないし、記憶にも残らないからです。
ストーリー構成の考え方として有名なものに「ヒーローの旅」があります。
「ヒーローの旅」とは、ジョーゼフ・キャンベルの著書「千の顔をもつ英雄」(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)をベースに、脚本家のクリストファー・ボグラーが自著「神話の法則 ライターズ・ジャーニー」(ストーリーアーツ&サイエンス研究所)でストーリー構成を12段階に簡素化してまとめたものです。
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目次
「ヒーローの旅」とは?
「ヒーローの旅」は、元々作家や脚本家のためにまとめられたものですが、コンテンツマーケティングにおいても、ユーザーとコミュニケーションを図るための手法として有効です。
下図は、その「ヒーローの旅」を円グラフにまとめた「ヒーローホイール」と呼ばれるもので、頂点の(1)から時計回りに(12)まで進む「旅の行程」を表しています。
「ヒーローホイール」の内側の円は、ヒーロー(主人公)が、
第一幕(日常世界)→第二幕(非日常世界)→第三幕(日常世界)
に至る(1)~(12)の各ステージを表しています。外円は各ステージおけるヒーロー(主人公)の態度変容を表しています。
では、この三幕構成(12段階のストーリー構成)ができていれば、ストーリーは必ず成立するのでしょうか?答えは「イエス」であり、「ノー」です。
ストーリー自体は作れるかもしれませんが、心を動かされない退屈なストーリーであっては意味がありません。
心を動かされる物語の3つのツボ
心を動かされる物語のツボは、「Change(変化)」と「Contrast(対比)」と「Character(個性)」にあるといえます。
例えば、大ヒットした映画やドラマ。
キャラクターなら、「スター・ウォーズ」のハン・ソロとルーク・スカイウォーカー、「タイタニック」の貧乏な青年ジャックと富豪の娘ローズ、「ダークナイト」のバットマンとジョーカー、「24」のジャックとクロエ…。
構図の対比なら、善と悪、失敗と成功、挫折と成長、貧乏と金持ち、男と女、生と死…。
このように、心を動かされる物語では、必ず「Change(変化)」と「Contrast(対比)」と「Character(個性)」が強く描かれています。問題提起から問題解決に至るプロセスにおいて、心を動かす物語の3Cが強調されるほど、人は驚き、心を動かされ、共感します。
また、人は基本的に情報を記憶することが苦手です。
星空を眺めても、一つひとつの星を覚えることは困難ですが、星座という形で点と点を線でつなげ、そこに物語を添えることで星の位置を覚えます。
単なる名前や数字の羅列には、心を動かす物語の3Cがないため、心を動かされることもないし、記憶することも困難です。私たちは、幼いころに聞いた童話のストーリーは忘れませんし、退屈な部分がカットされたストーリー(人生)は、たとえ30年前の幼児のころのことですら鮮明に覚えているものです。
人は、何も起こらない事実や無機質な情報にはすぐ退屈します。それが心を動かすストーリーであれば、たとえ悲劇であろうと恐怖であろうと興味を抱き、心にとめます。
ストーリーはそれほどまでに人の心を動かし、記憶に残るものなのです。だから、人に何かを伝えるときにはストーリーが欠かせないのです。ストーリーは心を動かすスイッチであり、伝えたい情報を心に刻む記憶装置なのです。
とはいえ、ストーリーの主人公はあなたではない
例えば、あなたは今、ビジネスにおいてユーザー(潜在顧客/見込み客)に自社の魅力を伝え、商品やサービスを購入してもらいたいと考えているとします。
あなたがユーザーに伝えたいと思うストーリーの主人公は、あなた自身ではありません。
あなたは主人公であるユーザーを第一幕(状況設定)から第三幕(解決)へ導くメンター(助言者)なのです。
ユーザーが「バットマン」のブルース・ウェイン(主人公)なら、あなたは執事のアルフレッド・ペニーワース(メンター)であり、ユーザーが「スター・ウォーズ」のルーク・スカイウォーカー(主人公)なら、あなたはヨーダ(メンター)なのです。
ユーザーがある問題を抱え、それを解決したいと思ったとき、もし、あなたが下の写真の人のように一方的な主張をしたら、ユーザーはあなたに心を動かされたり、共感を抱いたりするでしょうか?
多くの企業は自社のアピールに躍起になるあまり、意外にもこういう一方的な主張をしがちです。
ユーザーが自分の求める情報を好きなように取捨選択できる時代に、一方的な自己主張だけをしても、ユーザーの耳には届きません。もちろん心も動かされないし、共感もしません。仮に瞬発的に興味を引いたとしても、一過性で終わることでしょう。
つまり、あなたがビジネスにおいてユーザーに認知され、商品やサービスを購入してもらいたいと思ったら、まず相手の立場になって「心が動くストーリー」を用意しなければなりません。あなたの成功は、ユーザーが描くストーリーに、あなたが描くストーリーを重ね合わせられるかどうかにかかってきます。
「ヒーローの旅」を使って商品・サービスをどのようにストーリーへ落とし込むか
では、あなたの商品やサービスを「ヒーローの旅」にあてはめ、ユーザーのストーリーと同期させてみましょう。
例えば、あなたはバラの香りのする口臭消しサプリ「ROSE♥KISS」を売りたいと考えているとします。 ペルソナは17歳の多感な男子から、これまでまともな恋愛をしてこなかった35歳までの独身男性とします。
ここで、ユーザー(ヒーロー)のストーリーを考えてみます。外円の赤字がユーザー(ヒーロー)の態度変容となります。
第一幕(日常世界)
(1)日常世界(問題意識の欠如)→口臭は仕方がない。口臭がある自覚がない
(2)行動喚起(意識の芽生え)→恋人ができない。モテない
(3)喚起に対する拒絶(変化に躊躇する気持ち)→そんなの関係ない!口臭のせいじゃない!
(4)メンターとの出逢い(躊躇する気持ちの克服)→百年の恋も冷めるよ。口臭が好きな人はいないよ
第二幕(非日常世界)
(5)未知の領域へ踏み込む(変化を誓う)→口臭を消そう!バラの香りの口臭消しサプリ
(6)試練・仲間・敵(第一の変化を経験)→友達が増えた?距離感が近くなった?
(7)未知の世界へ接近(大きな変化に備える)→自信がわく。好きな女の子にアプローチ
(8)最大の試練(大きな変化への試み)→ファーストキスへの挑戦
(9)報酬(試みの結果)→バラの香りに彼女もうっとり♥
第三幕(日常世界)
(10)帰路(変化に再び挑む)→自信も生まれるが、移り気が災いして彼女とこじれる
(11)復活(大きな変化への最後の試み)→彼女のキスほど甘く幸福を感じるキスはないと再認識
(12)帰還(問題の克服)→本当に好きなのはキミだけだよ!とハッピーエンド
ここで重要なのが、(4)のユーザーを旅に誘う「メンター(あなた)」の役割です。あなたはユーザーに旅立ってもらい、あなたの商品「ROSE♥KISS」を購入したくなるよう、態度変容を促す必要があります。ただし、あくまでもユーザーが自分事化できるコンテンツを発信しなければなりません。
あなたは、「ROSE♥KISS」を使ってユーザーを旅に誘いますが、ここで、ことさら商品訴求をしてはいけません。この時点で「ROSE♥KISS」がどんなバラのエッセンスを使っているか、どこで生産されているか、どんな効用があるかは二次的な情報で、ユーザーの関心事はあくまでも「好きな女の子とのキス」なのです。
ストーリー体験を通じて興味・関心を抱かせる
口臭を気にしている人には「口臭で損をしていますよ」「口臭は女の子に嫌われますよ」とメッセージを送り、口臭を気にしていない人には「キスをするとき口臭を気にしたことがある?」「自分は口臭と関係ないと思っていませんか?」「キスほど素敵な愛情表現はない」と意識を芽生えさせ、キスにおける口臭の悪影響、不利益、さらには恋愛におけるキスの魅力、キスの重要性、キスの心理的効果を説くことで態度変容を促します。
例えば、キスが恋愛だけでなく、人生においてもいかに役立ち、多大な幸せをもたらすものであるかを、「キスさえあれば、人生ハッピー!」と題して、さまざまなデータをストーリーにして伝えていくのもいいでしょう。
ストーリー例「キスさえあれば、人生ハッピー!」
このように、ストーリー体験を通じて恋愛とキスに興味・関心を抱かせることで、「ROSE♥KISS」という商品(なくても困らない物、他人事)を、「この商品があったら素敵な世界が広がる」と夢を与え、自分事化してもらいます。
ユーザーに新たな価値体験を与え、ユーザーの人生を豊かにすること――それが「ヒーローの旅」なのです。
キスにおいて「口臭」と「バラの香り」の違いが、男女の恋にどれほどの影響を与えるのか。
あなたは商品「ROSE♥KISS」を通じてストーリーを作り、ユーザーはそのストーリーに夢を見いだし、旅の終わりにハッピーエンドを迎えるのです。
イラスト:タナカケンイチ
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