E-A-Tの三原則(専門性/権威性/信頼性)【コンテンツづくりの三原則 第6回】
2023年現在、E-A-Tのフレームワークは、新たな要素として'Experience(経験)'を追加することで、E-E-A-Tというより進化した概念へと展開しました。
本記事はその変革前のE-A-Tが中心に取り扱われていた時代の情報を反映しています。
予め理解した上でご覧になってください。
オウンドメディア運営において、コンテンツづくりは最大の肝です。「コンテンツづくりの三原則」では、毎月1つのコンテンツづくりのテーマや目的を取り上げ、そこに紐づく3つのトピックを深掘りしていきます。
第6回は、Googleが提唱する「E-A-Tの三原則」。Googleが公開している「検索品質評価ガイドライン(General Guidelines)」の中に、「E-A-T」という項目があります。これは、「専門性(Expertise)」「権威性(Authoritativeness)」「信頼性(Trustworthiness)」の頭文字から取ったもので、Googleが考える、質の高いコンテンツをユーザーに提供するには、E-A-Tの3つの要素が満たされなければなりません。このE-A-Tを意識したコンテンツを作成することで、検索順位の上位を狙うことができます。
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目次
専門性:コンテンツ作成者がその分野で専門的な知識がある
E-A-Tは3つの要素から構成されますが、中でも特に重要とされるのが「専門性」です。専門性の高いウェブサイトを構築して情報発信をすることは、続く権威性や信頼性の獲得にも深く関連しているからです。
Googleの検索品質評価ガイドラインには、「高品質なページやウェブサイトには、そのトピックにおいて権威があり、信頼できると認められるだけの専門性が必要である」といった主旨の内容が記述されています。つまり、専門性がなければ、基本的には権威性も信頼性も構築できず、E-A-Tの中でも専門性がベースとなっていると考えられます。
これは、二次情報を集めただけのまとめサイトのような内容のウェブサイトより、1つのテーマに特化したウェブサイトのほうが高く評価されることを意味します。その分野に精通した専門家が記事を書くと、より評価が高まる可能性があるということです。
Googleは、専門性がある人が書いた記事や、その分野に特化したウェブサイトに掲載されているコンテンツであれば、記事の質も高くなると判断します。
厳しいコンテンツ品質の基準が求められるYMYL
GoogleがYMYL(Your Money or Your Life)と定義する金融・生活(健康)情報は、人の命にも深く関わってくるため、検索品質評価において、特に厳しい基準が設けられています。
YMYLが広く知られるようになったのは、2017年12月に実施された、いわゆる「健康アップデート」です。これは、その1年前に医療・健康系メディア「WELQ」(株式会社ディー・エヌ・エー)の虚偽記事や盗用記事が問題視され、閉鎖となったことと無関係ではないでしょう。
以後、「健康アップデート」によって、いい加減な二次情報をかき集めたメディアやブログの多くが順位を大きく落とすようになり、医師や病院、行政機関の公式サイトの順位が上がるようになってきました。どんなにコンテンツ量が多くてPVを稼いでいても、専門性の低い情報が多いメディアは評価を下げることになったのです。命に関わる情報はもちろん、お金や生活に関する情報が間違っていると、多くの人に損害を与え兼ねないからです。
Googleが提示するガイドラインでは、YMYLについて次の7つのジャンルが指定されています。
- 最新の重要なニュースとイベント:国際的なイベント、ビジネス、政治、科学、テクノロジーなどの重要なトピックに関するニュースページ
- 市民の権利、政府、法律:政府機関、公的機関、法的問題といった市民生活を維持するために重要な情報のページ
- 金融情報:財務アドバイスや保険などの情報を提供しているページ
- ショッピング:オンラインでの商品・サービスの調査や購入に関するページ
- 健康と安全:医療や防災など、緊急時の準備などの方法やアドバイスに関するページ
- 人々のグループ:人種、宗教、性別といった、人々のグループに関する情報や主張を提供しているページ
- その他:フィットネスや栄養、住宅情報、大学の選択、仕事の探し方のページ
Googleは、このようなYMYLに関するコンテンツに高い品質を要求します。
ただし、YMYLに関わる専門的な内容であっても、ユーザーは常に専門家やプロの専門的な情報だけを求めているとは限りません。サイトのファンになって日常的に訪問してもらうようにするためには、わかりやすい分析や意見、切り口が必要です。
例えば、以前、当サイトでも取材した「シェアーズカフェ・オンライン」を運営する中嶋よしふみ氏は、こう言います。
“時事性、専門性、熱意、この3つが組み合わさった記事を書けたときに爆発的に読まれる”
「シェアーズカフェ・オンライン」は、ファイナンシャルプランナーをはじめ、士業や大学教授などの専門家によって独自の切り口で記事を書き、支持を得ているビジネスメディアです。
下記は、「シェアーズカフェ・オンライン」の最近の記事のタイトルです。
- 新型コロナが中小零細企業に与える教訓(玉木潤一郎 経営者)
- 高齢者が働くと年金が減る制度は廃止すべき(塚崎公義 大学教授)
- 中止された東京マラソン、参加費を返還しないことは法的に問題アリ? (及川修平 司法書士)
- 貯金ゼロでも老後は安心かもしれない、という話。(野口俊晴 ファイナンシャル・プランナー)
いずれも、専門家によるビジネス・金融といった専門的な話ですが、どの記事も読者が広く自分事として捉えられる問題となっています。
コンテンツの発信者は、どんなに専門的で難しい問題でも、読者が理解できるようにわかりやすく表現しなければなりません。それは、コンテンツを作る際の大原則です。専門家自身がわかりやすく書くことが難しい場合は、ライターを使って専門家にインタビューをして、まとめてもらうという手もあります。
権威性:コンテンツ作成者がその分野で知名度があり、多くの人が認めている
権威性とは、知名度やブランド力ともいえます。具体的には、有名な大企業や大学、公的機関などを指します。個人であれば、ビジネスで成功していたり、国家資格を持っていたり、多数の著書を出していたり、マスコミの露出が多かったりすると、権威性が高いということになります。
つまり、無名の中小企業やベンチャー企業が、いきなり高い権威性を持つことは難しいともいえます。権威性は、一過性のコンテンツの内容だけで担保できるものではなく、長期間の蓄積と実績によって育まれるものです。権威性のあるオウンドメディアにするためには、まず長期的視野を持って対応していかなければなりません。
では、無名の中小企業やベンチャー企業が権威性を持つコンテンツを発信することはできないのでしょうか。
権威性を保持するためには、一般的に下記のような条件が指標になると考えられます。
- 実績と名前のある大企業や機関である
- 署名記事である
- 専門家による記事がある
- 運営者の名前が明示されている
- テーマを絞っている(専門性が高い)
- 記事の量が充実している
- 定期的に記事を更新している
- 記事の質が高い
- 記事の公開日、更新日が公開されている
- 権威性が高いサイトからの被リンクがある
- ドメインパワーが強い(運営期間が長い)
反対に、時間をかけてこのような条件を満たしていけば、権威性を担保できるということです。いきなり大企業にはなれなくても、地道にコンテンツを発信していけば、権威性を持つことができるのではないでしょうか。
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権威は与えられるものではなく、みずから作り出していくもの
下記は「老後 貯蓄」のキーワードでGoogle検索して上位5位に表示された記事です(2020年9月29日現在)。
- 60代の平均貯蓄額は?今からでも増やす方法はある?(ハウス・リースバックマガジン)
- 老後のための貯蓄…50代はいくらが平均?これから貯める方法(fuelle)
- 老後資金のために必要な平均貯金額とは(おかねとほけん)
- 老後のために必要な貯蓄率は? 黄金方程式で簡単計算(日本経済新聞)
- 老後のお金の考え方 必要貯蓄額をチェック(マネードクターナビ)
一部上場の大手企業の記事もありますが、必ずしも大手の有名な保険会社や金融会社だけではありません。厚生労働省のような公的機関も入ってきていません。
1位に表示されている「ハウス・リースバックマガジン」は、「老後の生活資金」のカテゴリーだけで2018年10月〜2020年6月の1年9ヵ月のあいだに、84本の記事を配信しています。平均して、毎月4本です。
2位以下の上位を占めるサイトのコンテンツも、どれも例外なく上記の指標の多くを満たしています。反対に、これらの指標を満たしていなければ、いくら大企業や公的機関であっても、権威のある人を起用していても、上位表示されることは難しいでしょう。つまり、ある程度時間はかかるとはいえ、権威は与えられるものではなく、みずから作り出していくものだといえるのです。
また、権威性を保持するための指標に「権威性が高いサイトからの被リンクがある」と記しましたが、専門家の署名記事や顔出し、詳細なプロフィールがあると、そのサイト自体の評価以上に、他の運営者が「このサイトは信頼できそうだから、被リンクをつけよう」と考え、引用してくれる可能が高まります。それが、ひいては権威性を高めることになるのです。
反対に、誰が書いたかわからない無署名の二次情報をいくら大量生産しても、権威性が高まることは決してないのです。
信頼性:情報に嘘偽りがなく、信頼できる
信頼性とは、いかに多くの人からその内容が信頼されているかを意味します。しかし、E-A-Tの三原則は、すべてお互いに相関関係にあるため、どれか1つが欠けても成立しません。信頼性も、専門性と権威性があって、初めて得られます。
信頼を獲得することは、専門性、権威性以上に時間がかかります。どんなに専門性と権威があっても、人はすぐに信頼するとは限りません。あなたの周りを見ても、それは体感していることだと思います。上司や学校の先生に、どんなに専門性と権威があっても、その人を信頼するかしないかは別の要因が働くはずです。
あなたの能力を適性に評価し、成長をサポートしてくれているか。また、いざとなったときに助けてくれるのか。そういった要素がなければ、いくら専門性や権威性があっても、あなたは信頼しないでしょう。
ましてや、企業が見知らぬユーザーの信頼を得るためには、まずユーザーファーストの思想が不可欠です。友情や恋愛と同じように、時間をかけて継続的に信頼を獲得するために、情報を発信しなければならないのです。
信頼性の担保には情熱が重視される
また、信頼性の担保には情熱が重視されるという、米国のInstitute for Public Relationsによる研究発表もあります。
“コンテンツへの情熱と愛は、特にブロガー(情報発信者)が知識についての権威である場合、ブロガーの正当性をより強めます”(P.5)
“ブロガーの専門的背景や知識以上に、情熱的で透明性があることが、信頼できるブロガーであることを示唆していました”(P.11〜P.12)
ここではブロガーという表現を使っていますが、コンテンツ発信者のことだと理解していただいて差し支えありません。
つまり、ユーザーは単に正確で専門的な説明だけで信頼するわけではないということです。コンテンツの発信者本人が、トピックに対してどれくらいの情熱を持って書いているかどうかも重要なのです。
例えば、2020年7月16日、国会で東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦名誉教授が、新型コロナウイルスの感染拡大に危機感を訴えたのは記憶に新しいところですが(動画)、新型コロナウイルスの感染拡大の危機を眉間にシワを寄せ、声を震わせ、時折涙ぐみながら、熱く訴えました。児玉名誉教授の訴えを聞いた人の多くが、彼の熱意に心が震えたのではないでしょうか。
ネットでも、「この人は信頼できる」「感動した」という声が多かったのもうなずけます。児玉教授は、2011年の東日本大震災のときにも、政府の遅々とした対応に怒りを込めて力強く訴え、多くの共感を呼んだことでも知られています。児玉名誉教授の情報発信力と行動力は、まさにE-A-Tの三原則の見本といってもいいでしょう。
情報源や責任の所在を明確にすることが大切
信頼性を得るためには、引用した情報源や根拠のあるデータの明示も欠かせません。情報源を明確にすることで、コンテンツに説得力と信用を付与します。ニュース記事でもよく見られる「~といわれている」「~とされている」「〜といった批判の声がありますが」といった曖昧な伝聞調の言葉の使用は、特に気をつけたいところです。
これは、引用の責任を回避しているだけでなく、根拠のない印象操作にもなりかねません。「~といわれている」とは具体的に誰が言っているのか、「〜といった批判の声がありますが」とは具体的に誰が批判しているのかが明示されていなければ、信頼性を得ることはできません。
引用だけでなく、執筆者も署名をして、その記事は誰が責任を持って書いているのかを明らかにすることをおすすめします。有名な専門家や著者による署名記事は、それだけである程度E-A-Tの三原則の担保となりえますが、責任の所在を明らかにする意味でもできるだけ署名記事にすべきです。
著者がペンネームを使ったり、取材対象者を仮名にしたりするケースは多々ありますが、その場合も、例えば「アレキサンドラ佐竹山」「綾大路あやたろう」といった、いかにもペンネーム(仮名)ですといった署名は避けたほうがいいでしょう。
人気作家や有名なコラムニストならともかく(ほかのメディアでも書いている実績が多ければGoogleの評価は上がります)、ユーザーが記事を読む前に猜疑心を抱きかねません。企業のオウンドメディアで、このようなペンネームを使ってもメリットはほとんどありません。
E-A-Tには特効薬はない
E-A-Tという言葉自体は、検索品質評価ガイドラインで言及された比較的新しい言葉ですが、Googleがコンテンツ発信者に質の高いコンテンツの制作を求めていることは、以前から変わっていません。
E-A-Tには、「こうすればいい」という特効薬はありません。効果測定ができるわけでも、定量的なものでもありません。ユーザーが受ける印象といった、定性的なものを改善していくしかありません。
専門性を活かしたオリジナルコンテンツの質を向上させていき、ユーザーに信頼されることが重要になりそうです。しかし、アップデートを経るたびに、E-A-Tの重要性が上がっていくことは間違いないでしょう。
「検索順位で1位になる」ことが、コンテンツを作成する最終目標ではありません。
小手先のテクニックに溺れず、どうしたらユーザーの役に立ち、信頼されるコンテンツが作れるかを考え続ければ、自ずとE-A-Tを満たしたコンテンツになるのではないしょうか。
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- 1.成果を評価できない
- 2.質を担保できない
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