【#ナイルの本棚】2020年5~6月の紹介書籍まとめ
当サイトのTwitter(@cont_hub_com)で公開中の、ナイルのコンテンツチームが編集者/ライターの方々に役立てていただきたいおすすめ本を紹介する企画「#ナイルの本棚」。
Twitterの140字では紹介しきれないので、2020年5~6月にかけて公開した本のレビューを「増補改訂版」として改めてお届けします!
\「自社で記事制作が難しい…」等のお悩みはお気軽にご相談ください!/
目次
頭の中の「ぐるぐる」をどうすれば伝えられるか?
【こんな人におすすめ】
・文章を書きたいと思っても何から書いたらいいのかわからない人
・わかりやすい文章を書きたいと思っている人
20歳の自分に受けさせたい文章講義
古賀史健(星海社新書)
編集者/ライターとして仕事をしているにもかかわらず、自分の考えを文章としてすぐまとめられないのが悩みでした。
一旦、書くだけ書いて、それから自分の文章を自分で修正する。そんな流れで文章を書いていたので、1本の記事を書くのに長い時間をかけていたのです。そこで、もっといい書き方はないものかと思い、手に取ったのがこの本。
ですが、本書を読んでみると、自分が実際に執筆時にやっていることと同じようなことが本書の序盤に書かれていました。
「頭の中の『ぐるぐる』を、伝わる言葉に“翻訳”したものが文章なのである」
自分が執筆するときにも、頭の中の「ぐるぐる」(ぼんやりとした「感じ」や「思い」)を一旦書き出して、整った文章になるよう翻訳していました(この翻訳を編集ともいうのですが)。その翻訳への意識について書かれているところが、ほかの文章論と一線を画す部分だと思います。
では、具体的にどうすればいいのか。その具体的な方法論が、この本のメインコンテンツ。
例えば、こんなことが書かれています。
・リズムの悪い文章はつながりが悪いので、正しい接続詞を使う
・どんな文章でも読者をイメージして書く
・「何を書くか」ではなく「何を書かないか」を考える
自分でも無意識に行っていた作業について書かれていたり、まったく気がつかなかった視点について書かれていたり。いずれにしても、著者が「現場」で身につけ、体系化した方法論なので、説得力のある内容です。実際の執筆で「使える」方法論といってもいいかもしれません。
この文章も「ぐるぐる」を一旦書き出した後、編集をしてみたものですが…いかがでしょうか。
(富江弘幸 @hiroyukitomie)
優れた観察眼を持つことで世界は豊かに広がる
【こんな人におすすめ】
・自分ならではの視点を見つけ、それを文章で表現したいライター
・今の状況になんとなく閉塞感を抱えている人
観察の練習
菅俊一(NUMABOOKS)
文章が上手な人の多くは、優れた「観察眼」を持っています。ほとんどの人が見過ごしてしまいそうな事柄を見つけ、それを自分の言葉で表現する。この本は、そんな観察眼を養うための一冊です。
ページをめくると現れる1枚の写真。でも、よく見てみるとどこか違和感が…。その正体をきちんと言語化してみて、続く著者の解説を読む。掲載されている50枚以上の写真で、繰り返し「観察の練習」を行えば、観察力と文章力は確実にアップすることでしょう。
もちろん、優れた観察眼の効能は、文章がうまくなることだけではありません。今まで気づかなかったことに気づくことで、世界が豊かに広がるという一面もあるのではないでしょうか。
新型コロナウイルス感染症の影響で、なかなか外出できずに鬱々とした気持ちになりがちですが、身の回りを観察し、新たな発見があれば、少しは気持ちがやわらぐかもしれません。
著者はこの本の最後で、こう述べています。
「さあ観察を練習しよう。そして世界に溢れている面白さに気づいていこう。それさえできれば、きっと前よりも少しだけ、生きることが楽しくなるはずだ」
(山元大輔)
この世にあるものすべてがコンテンツである
【こんな人におすすめ】
・コンテンツ制作に携わっている人
・企画の発想力を鍛えたい人
・「逃走中」にハマっていた人
人がうごく コンテンツのつくり方
高瀬敦也(クロスメディア・パブリッシング)
当たり前のように「コンテンツ」という言葉を使っていますが、どう定義すればいいのでしょうか?
本書では、大胆にも「世の中のすべてのものがコンテンツになる可能性を秘めている」としています。例えば、「世界」という単位で見るよりも、「日本」「東京」「原宿」といったように狭めたほうが、コンテンツとして認知されやすくなる。イメージを明確にしていくと、引っ掛かりが出てくるわけです。
著者は「逃走中」「Numer0n(ヌメロン)」といった人気番組を手掛けたプロデューサー、高瀬敦也氏。ほかにもコンテンツのつくり方、広げ方、終わり方を考察しています。
特に、「コンテンツに人の気持ちは宿っているか?」という視点にはハッとしました。作り手の気持ちもそうですが、コンテンツの受け手の気持ちをくみ取ることも求められる。コンテンツづくりは、ただの作業になってはいけないのです。
なお、うちの娘たちは「逃走中やろう!」と公園を走り回ることがあり、コンテンツが人々に届いている様子を目の当たりにしています。
(高林ゆうひで @takataka578)
「編集とは」の答えが見つかる
【こんな人におすすめ】
・編集の意味について考えている人
・企画から完成までの流れが知りたい人
はじめての編集
菅付雅信(アルテスパブリッシング)
紙の編集からウェブの編集に転向して、自分の立場を見失っていた頃に出版された本。当時、書店でぱらぱらめくってみたものの購入せず、新装版が出版されたことで手に取りました。
この本では、「言葉」「イメージ」「デザイン」を編集の3つの要素として解説しています。コミュニティカレッジの講義録がもとになっているそうで、授業を受けている気分で楽しめました。細かい技術にふれられているわけではありませんが、「編集」の概念を理解することができます。
編集に携わる人間で、「編集ってどんな仕事?」と聞かれたときにすぐに答えを出せる人は多くないでしょう。制作には関わっているけれど、デザインや執筆をするわけではなく、ウェブページをアップしたり印刷したりするのは自分ではなく…。
編集の仕事を語る言葉は世の中にたくさんあり、どれも正しいと思います。
ですが、本書の中の「編集者は、何もできない人、何でもできる人」という言葉がすごくしっくりきました。
(せがわ)
コンテンツ中心から人を中心へ。変わりゆくオンライン上のコミュニケーション
【こんな人におすすめ】
・コンテンツマーケティングに携わる人
・ソーシャルメディアに関するビジネスをしている人
・ウェブの未来が気になる人
ウェブはグループで進化する
ポール・アダムス(日経BP)
原題は「Grouped」。ウェブの世界がコンテンツ中心から人を中心とした構造に変わることで、ソーシャルウェブでコミュニケーションをとる場合には、小規模におけるグループでのつながりや会話の流れに注目することが大切、というのがこの本のテーマです。
コミュニケーションは小規模のつながりに注目すべきという考え方は、今やあちらこちらでいわれ始めていることではありますが、本書では、多くの論文やデータ、事例がその考えの根拠として示されおり、非常に高い納得感を持って理解することができます。
平易な文章と親しみやすいイラストのおかげで、サクッと読み通すことができますが、各章の最後に設けられているアドバイスとまとめを拾い読みするだけでも、何かしら得るものがあると思います。
また、マーケティング業界で当たり前のように是とされてきた、インフルエンサー理論やファネル理論を一刀両断しているのも興味深いです。
「小規模なグループのつながりによって構成されるソーシャルネットワーク」を理解することは、情報過多の現代でコンテンツを作る際の強い味方になってくれると思います。
(ふかや)
人の心を動かすには「ベネフィット」を語れ!
【こんな人におすすめ】
・言葉の力で商品/サービスを売りたい広告担当者
・言葉の力で人の心を動かしたいウェブ編集者/ライター
ポチらせる文章術
大橋一慶(ぱる出版)
何かの商品やサービスをアピールしたいとき、強調しがちなのはだいたい「このサービスにはこんな新しい機能がついています!」のような「メリット」。もちろん、それも大事ではあるけど、消費者やユーザーの購入の決め手は「それでどういう自分になれるのか」「どれだけ自分が楽になるか」といった「ベネフィット」――。
自分もベネフィットを踏まえてモノを買っているはずなのに、いざ発信者側になると、目先のメリットにとらわれてしまう…編集者としては「なんてこった!」と思ったわけです。
コピーライター・大橋一慶氏が、言葉の力でサービスや商品をポチッとさせるためにはどうすればいいかをレクチャーした本書。広告の文言にまつわることがメインなので、いわゆる読み物記事を作っている編集者には無関係に思われるかもしれませんが、より多くのユーザーにページへ訪れてもらうために重要な「記事タイトル(つまりキャッチコピー)」や「導入文(つまりボディコピー)」を作るにあたって、とても有効なコツが詰まっています。
言葉を作るために必要な思考のプロセスや具体的な事例を挙げながら、会話形式で説明していく構成なので、とてもわかりやすい。具体的に売りたい商品やサービスがあるなら、それをあてはめながら読んでいくのもいいでしょう。
(加藤直子 @naokokt1)
マーケティングでお悩みの方へ