【#ナイルの本棚】2020年2月の紹介書籍まとめ
2020年1月からContent HubのTwitter(@cont_hub_com)で始めた、ナイルのコンテンツチームのメンバーが編集者/ライターの方々に役立てていただきたいおすすめ本を紹介する企画「#ナイルの本棚」。 やはり、Twitterの140字で説明するだけでは言葉足らずではないかと思い、現メンバーが一巡したこのタイミングで、これまでご紹介した本の解説を「増補改訂版」としてお届けします。
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目次
仕事で成果を上げるには、まず「人の心をつかむこと」
【こんな人におすすめ】
・良いコンテンツの作り方を模索する編集者
・作者のポテンシャルを引き出す関係値の築き方を模索する編集者
・成果を上げられる組織/チームの作り方を模索するマネージャー
悩んでも10秒 考えすぎず、まず動く!突破型編集者の仕事術
松田紀子(集英社)
メディアファクトリー時代に数々のコミックエッセイをヒットさせ、その後、雑誌「レタスクラブ」の編集長として売上部数の回復に尽力した松田紀子さんの著書。
「ダーリンは外国人」など、松田さんが手掛けられたコミックエッセイを何冊か読んでいたり、「レタスクラブ」の噂も伝え聞いたりしていたから…というのもありつつ、一方で同じ女性編集者として、どのようなキャリアを築いてこられたのかにとても興味があって手に取りました。
「考えすぎず、まず動く!突破型編集者の仕事術」という副題もついているので、編集者にとって有益なtipsが多く盛り込まれているのはもちろんですが、決して編集者だけに刺さる本ではないと思います。
なぜなら…
・誌面を改善するためにどう編集部のメンバーの気持ちを動かしたのか
・良いコンテンツを生むために作者とどのような関係を築いたのか
・やりたい仕事をするためにどう上司を攻略したか
・トラブルを最小限にとどめるために周囲に対してどう立ち回ったのか
といった、いわば広義の「人心掌握術」がつづられているから。
メンバーの士気が上がる組織づくりや、上司や仕事相手との関係性の作り方、自分がモチベーション高く働くための仕事術などに課題のある方に読んでみてほしいです。
「編集って楽しい、本を作るのって楽しい!」がとても伝わってくる――こういう方が仕事相手だったら気持ちが上がるだろうなぁと、なんだか元気をもらえる一冊!
(加藤直子 @naokokt1)
書き手の心構えを学んだ本
【こんな人におすすめ】
・文章術の基本を知りたい人
・文章の修正指示を明確にしたい編集者
・文章へのこだわりを知って熱くなりたい人
日本語の作文技術
本多勝一(朝日新聞出版)
「読んでおいてよ」。当時の同僚にこの本を渡されて、ちょっとムッとしたのを覚えています。出版社からウェブメディアの編集者に転身してすぐのことでした。
「今さら必要あるか?」と思って読んでみたら、目から鱗。「修飾する言葉とされる言葉」「句読点の打ち方」などを意識するだけで、ここまで文章は読みやすくなるのかと。それまで文章術についてしっかり学んだことがなかったのだと、痛感しました。
ほかにも、「修飾の順序」「助詞の使い方」「リズムと文体」など、さまざまな文章のパターンを見せながら、文章術の原則を導き出していきます。
例えば、修飾の順序の原則には、下記のようなものがあります。
・節を先に、句を後に
・長い修飾語ほど先に、短かいほど後に
・大状況・重要内容ほど先に
・親和度(なじみ)の強弱による配置転換
ただし、本書は単なる文章術の羅列では終わりません。
「テンというものの基本的な意味は、思想の最小単位を示すもの」「鈍感でない文章ということになってくると、その終極点はたぶんリズム(内旋律)の問題になるだろう」といったように、書き手としてのこだわりを感じさせる言葉が随所に入ってくるのです。
文章術の基本とともに、書き手はどのような心構えを持つべきか、僕はこの本から学びました。
(高林ゆうひで @takataka578)
ソムリエに学ぶ!相手に伝わる表現力の鍛え方
【こんな人におすすめ】
・語彙力を増やしたいと考えているライター
・客観的で誰にでも伝わる表現を身につけたいと考えている編集者
言葉にして伝える技術――ソムリエの表現力
田崎真也(祥伝社)
ソムリエ、料理評論家として知られ、世界最優秀ソムリエコンクールでも優勝経験のある田崎真也さんの著書。
私は、ビールや食についての記事を執筆・編集する機会が多く、表現力を高めたいと常々思っていました。そこで見つけたのがこの本。著名なソムリエはどのような考えで味わいを表現しているのか、気になって読んでみたのです。
ソムリエの仕事といえば、ワインのテイスティングをして銘柄を当てるようなことをイメージされるかもしれませんが、それは本質ではありません。飲食店でワインを中心に管理し、満足できるサービスを提供するのが仕事。
つまり、コミュニケーション能力が必要ですし、ワインに詳しくない人にもわかりやすく説明する表現力が必要になるのです。
そういった能力を持つソムリエが考える「言葉にして伝える技術」とは何か、表現力をどう鍛えたら良いか、ということがテーマの本書。言語化するときに大切なことが書かれています。
例えば、「先入観を捨てる」ということ。「国産だからおいしい」「厳選した素材だからおいしい」「手作りだからおいしい」といった表現を使ってしまうことはないでしょうか。
つい「国産=おいしい」と思ってしまうこともありますが、表現する際には、なぜ国産だとおいしいのかという理由を書かないと、説得力のない文章になってしまいます。
また、「相手や状況に合わせて適切な表現を使う」ということも大切。表現は相手がいてこそ成立するもので、その相手が理解できないと意味をなさないことになります。
自分だけが理解して、相手が理解できていない表現になっていないか、立場を変えて考えてみる必要があるでしょう。
本書では、このような気づきを与え、その上でどのように表現力を鍛えたらいいかが書かれています。しかし、よくよく考えてみると、これはワインの表現だけのことではなく、どんなジャンルにも当てはまることではないでしょうか。
読み終わった後でも、自戒も含めてまた読み直したい本です。
(富江弘幸 @hiroyukitomie)
わかりにくい文章から脱け出すための一冊
【こんな人におすすめ】
・文章を書く必要があるすべての人
・わかりにくい文章を具体的にどう指摘したらいいかわからない編集者
悪文
岩渕悦太郎(日本評論社)
この本における「悪文」とは、文章を読んだ人がわかりにくいと感じる文章のこと。悪文のどこに問題があるのか、何に注意すれば悪文から抜け出すことができるかを、わかりやすく的確にアドバイスしてくれます。
特に、巻末の「悪文をさけるための五十か条」は、わかりやすい文章を書くためのポイントが簡潔にまとめられており、私は定期的に読み返すようにしています。
この本の初版が出たのは1960年。つまり今から60年前の本です。
「今やマス・コミ時代で、文章が大量に生産されている。文章を書く層もずっと広くなって来ている。平素文章を書きなれていない人々にも、文章を書かなければならない機会がふえて来ている。その結果として、世間に現れる文章が必ずしもきちんとしたものとは限らないのであろう。」
「はじめに」に書かれた文章の一部を抜き出してみました。「マス・コミ時代」を「インターネット時代」と置き換えると、今の状況とまったく変わらないことに驚かされます。
60年後の読者、私たちにとっても有益な一冊です。
(山元大輔)
クリエイターがアイディアを練るとき、実は「編集」している
【こんな人におすすめ】
・商品やサービスの企画に携わる人
・広告のテキストやクリエイティブを作る人
・企画やキャッチコピーを考える編集者
「アタマのやわらかさ」の原理。クリエイティブな人たちは実は編集している
松永光弘(インプレス)
広告や企画、クリエイティブにかかわる書籍を数多く世に出してきた編集者、松永光弘さんの著書。筆者の方には、出版社時代にお会いしたことがあります。
彼が次々と違う切り口の企画を手掛けているのを見て、当時20代だった私は「この人の頭の中は、いったいどうなっているのだろう」と不思議に思っていたものです。
それから十数年を経て出版されたこの本を読んで、その疑問が解けました。松永さんが普段からしていることは「編集」そのものだったのです。
例えば、1枚の写真を置いただけでは何も起きなくても、隣に別の写真を置くと、その関係性によって意味やメッセージが生まれます。モノとモノを組み合わせたり、順番を並べ替えたりすることで、コンテクスト(=文脈)は多様な形に変化するのです。
クリエイターの方は、そうして見つけた新しい価値を、権威が欲しければ重厚に、流行や空気感が大切なら軽やかに味つけしていくのでしょう。これは確かに、編集のおもしろさだなあと納得しました。
中でもドキッとさせられたのが、ベテランが「こうあるべき」をふりかざして可能性を閉ざす“負の目利き”の話。経験を積むと、誰しもが自分の中にある正しさに少なからずとらわれます。「これは違うな」「ダメだな」と感じたときこそ要注意!
編集者だけでなく、新しいアイディアの切り口が欲しい方、自身の企画にマンネリを感じている方にもおすすめの一冊です!
(西 倫英 @nishi_n)
1人から盗むとパクリ、複数人から盗むとオリジナル
【こんな人におすすめ】
・クリエイティブに関わる人
・企画系の仕事をしている人
・自分にクリエイティビティがないと思っている人
クリエイティブの授業 STEAL LIKE AN ARTIST "君がつくるべきもの"をつくれるようになるために
オースティン・クレオン(実務教育出版)
アーティスト、詩人、作家などさまざまな肩書を持ち、創作活動を通じた講演も数多くこなしているオースティン・クレオンの著書。以前に働いていた職場で、新人研修に役立つ本がないか探していたときに出合いました。
クリエイティブに関わる人で、「オリジナルなものを作らなくてはならない」という強迫観念に縛られる人は多いでしょう。その中で、この本の「1人から盗むとパクりだが、複数人から盗むとオリジナルになる」は名言です。
よく、何かを作る第一歩は模倣だといわれます。ただし、模倣しているうちに自分のオリジナルが何かわからなくなることもあるのでは。
この本では、コピーするものの本質に迫ることが重要だと説いています。なぜそれがいいと思ったのか、それを感じるのは自分。それを突き詰めていくことで新しいアイディアが生まれるはずです。
同シリーズの別の本ですが、「並外れた成果を出すには、「まずやってみます」というのをやめることだ」という一文も心に残っています。
(せがわ)
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