オウンドメディアは数より熱量!第一三共ヘルスケアが発信する解決法

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オウンドメディアは数より熱量!第一三共ヘルスケアが発信する解決法

第一三共ヘルスケア株式会社が運営する「健康美塾」は、「知るほど楽しい!美と健康のツボ」をコンセプトに、美や健康に関するさまざまな情報を提供する女性向けのオウンドメディア。
マンガやイラストをふんだんに使った、製薬会社ならではの美や健康に関する豊富なコンテンツが気軽に楽しめるのが特徴だ。

コンテンツのカテゴリーも「季節のビューティアイテム」「くすりと健康の”思い込み”あるある」「ガールズ本音リサーチ」など、ユーザーのニーズにピンポイントで合わせた、わかりやすい切り口で細かく分けられている。

そして、「健康美塾」が最も注力しているのが、ユーザーとのコミュニケーションだ。会員組織「ちーむ健康美塾(仮)」を軸にした情報交換やファンミーティングをはじめ、アンケート企画などユーザーとの接点を重視した施策を展開。エンゲージメントの構築を図っている。

「健康美塾」の北條秀明編集長に、製薬会社としての健康メディアの在り方、そしてオウンドメディアに求める役割について語ってもらった。
 

(2)

「健康美塾」は、「知るほど楽しい!美と健康のツボ」をコンセプトに、製薬会社の視点から情報を届ける。

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健康に対する関心をより日常的に持っていただく

――「健康美塾」がオウンドメディアとして果たす役割をお教えください。

製薬会社なので、何か症状が出たときに興味・関心を持っていただくことが大前提です。健康に対する関心をより日常的に持っていただくことと、クオリティ・オブ・ライフを高めていくことが「健康美塾」の理念としてあります。

一日でも体に不調を感じたときに、商品を使用する以外の解決策を提供する方法として、オウンドメディアを運用しています。コンテンツに関しては、弊社の薬や化粧品に関する情報はもちろん、商品に直接関係ない情報も積極的に盛り込むようにしています。

――商品の情報というより、予防という観点からのコンテンツが中心になっていますね。

そうですね。第一三共ヘルスケアの場合、「健康美塾」とは別に、「くすりと健康の情報局」という、具体的な症状で悩んでいる方の解決に向けたオウンドメディアも運営しています。「健康美塾」は、そこまで悩んでいない人たちにライトに楽しんでいただきつつ、美と健康に関する情報を発信するメディアという立ち位置です。

「読んだら終わり」にはしたくない

――「健康美塾」は、どのようなフローで運営されていますか?

まず、年間のテーマを基本的に決めて、それに対して進行していきます。弊社の中でも生活者の関心事やニーズを共有しながら、「これはこのタイミングのほうがいいね」など、適宜変更しながら進めていきます。

――編集長になられてから、特に課題と感じたことはありましたか?

SEOの観点では、第一三共ヘルスケアのドメイン自体がかなり評価されていて、「口内炎」や「のどの痛み」などを検索したとき、上位にランクインしています。ただ、それで記事を読んでもらっても、すぐ離脱してしまう。検索ニーズに応えられているという点では目的を達成できているのですが、「読んだら終わり」にしないために何をするかというのが現在の課題です。

――その課題に対してどんな施策を講じていますか?

「健康美塾」では、第一三共ヘルスケアの商品をすでにご愛用いただいている方々に対して、恩返しをしたいと考えています。その一環として最近、「ちーむ健康美塾(仮)」という会員組織を立ち上げました。弊社の商品や「健康美塾」について語っていただくための、ファンミーティングも実施しています。

ユーザーの生の声をお聞きしながら、より「健康美塾」や弊社の商品を愛してくださっている方が読みたくなるような、恩返しができるメディアにしたいと思っています。

――ユーザーが会員になることの最大のメリットは何でしょうか?

第一三共ヘルスケアや「健康美塾」をより近くに感じてもらうために会員組織を作ったので、将来的には皆さんでお話しいただくオフ会のようなことも、積極的にやっていきたいです。あとは、コンテンツも含めて、会員の方だけに向けた特別感をご提供できればと考えています。

――「健康美塾」のKGIは、具体的に数字で設定されているのでしょうか?

最終的なゴールは数値化していません。恩返しという立ち位置で、KPIもあまり明確に追いかけないようにしています。できれば、訪問客が「第一三共ヘルスケアの商品だから」とか、「『健康美塾』で紹介されていたものだから」と考えて、商品を手に取ってみようと思っていただけるといいなと思っています。ただ、それを明確に数字で追いかけていくことは、現時点でしないようにしています。

ちょうど「健康美塾」を担当するときに、佐藤尚之さんの「ファンベース」(ちくま新書、2018年)を読んで感銘を受けたのですが、人口が減っていく中、新規顧客を獲得するのではなく、すでに弊社の商品を愛してくださっている方と、継続的にコミュニケーションをとることが大事だと感じたんです。

そのために、今いらっしゃる方とコミュニケーションをとるには、ただコンテンツを発信していくだけでは足りない。そういう思いから、会員組織を作ったという経緯があります。

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ユーザーとコミュニケーションがとれる場としての会員組織

(3)
――最近、熱烈なファンとのコミュニケーションを表す「ファンダム」という言葉が注目されています。一方的に情報を発信するだけのオウンドメディアの時代ではなくなっている気がします。

そうですね。2018年7月に「ちーむ健康美塾(仮)」のプレファンミーティングを開催させていただいたのですが、そこでお会いした多くの方に、「また来たいです」とおっしゃっていだきました。ざっくばらんにお話ししただけですが、「こういう人が商品を作っているんだ」とか、「こういう考えを持ってこの商品は生まれたんだ」といったことに興味を持っている方が多かったです。とても有意義な時間になりました。

実際に開催するまでは、ご満足いただけるのかドキドキしましたが、開催してみて、第一三共ヘルスケアのことをさらに身近に感じてくださったことを実感しました。それが、会員組織を作るにあたってすごく自信になりました。

規模はすぐに大きくはできませんが、継続的に続けていくことで、第一三共ヘルスケアに対して少しでも親近感を持っていただける人が増えたらいいですね。本当に弊社の商品を好きでいていただける方と、コミュニケーションがとれる場所として、会員組織が機能すればいいなと思っています。

――会員になってくださる方は何を求めていると感じますか?

「どうやって開発されているのか」や、「ブランドを担当している人が、どういう思いを持っているのか」といった、製品の内側を知りたいという声が多いです。

オフラインのイベントに、第一三共ヘルスケアのブランド担当を呼んでコミュニケーションできればと考えていますが、「健康美塾」の会員組織では、それが叶えられると思っています。

人はブランドへの「強い思い」で動く

(4)
――商品へのコンバージョンという観点で「健康美塾」が果たす役割は、どのような状況ですか?

「これも第一三共ヘルスケアの商品なんだ」という気づきが、「健康美塾」の中で生まれているというのは新たな発見でした。

例えば、肌の悩みを検索したときに「健康美塾」のコンテンツにヒットしたとします。第一三共ヘルスケアは、医薬品だけでなくスキンケア品やオーラルケア品なども扱っていますが、商品名は覚えていても、どこの会社の商品か覚えていない方はたくさんいます。「健康美塾」でそこをつなげて、「『ミノン』(敏感肌向け全身シャンプー)を出している会社の商品なら信頼できそう」というように、第一三共ヘルスケアの信頼性を高められていると思います。

――薬を探すときも、信頼関係の醸成につながれば理想的ということですか?

そうですね。もちろん、第一三共ヘルスケアは研究開発に力を入れていて、商品には絶対の自信があります。とはいえ、生活者の方が初めて手に取るときに、成分や細かい効能を気にして手に取る人は少ないのも実情です。それよりも、人はブランドへの「強い思い」で動くと信じているんです。

「健康美塾」は、健康・美への「強い思い」を発信できるのがメリットと感じています。それを感じて商品を手に取っていただき、研究の結果を体験して「いいね」となれば、次の商品開発や研究の成果につながると思っています。

――コンテンツはどのぐらいの頻度で配信されていますか?

毎月更新と隔月1回更新のコンテンツがあり、だいたい月に1回、2、3本のコンテンツ更新をしている状況です。毎月プレゼントキャンペ−ンも行っています。

あとは、扱う商品の特性上、女性向けが多いので、母親が共感できるコンテンツを大切にしています。「子育てダイアリー」のような漫画をはじめ、商品寄り、医療系、育児系といったコンテンツの更新度合いが高くなっています。

育児系に関しては、すでにファンがいる作家にテーマをお伝えして書いてもらっているので、人気のコンテンツになっていますね。

これが最適解というのはずっと出てこない

――医薬品はLTV(ライフタイムバリュー)※という観点で親和性が高いですよね。

そうですね、すごく高いと思います。それに、小さなお子さんをお持ちの方からご年配の方まで、ユーザーの声で「もっとこうしてほしい」などのご要望が比較的可視化しやすいですね。

滞在時間がどれぐらいか、来訪者数がどの程度なのかなどを複合的に見て、このコンテンツはやめて来年度はこういうテーマのコンテンツを作ってみようとか、メディアを開設した当時からトライアンドエラーをずっと繰り返しています。

ただ、これが最適解というのはずっと出てこないと思います。より良いオウンドメディアになるため、もっと皆さんに恩返しができるメディアになれるよう、模索している状態です。

※顧客が商品やサービスと、関係を築いてから終了するまでに、どれだけ利益をもたらすかを算出したもの。顧客生涯価値(Life Time Value)。

――今後、コンテンツ1本のコストを下げて、本数を増やすことは考えていませんか?

ネット上には健康メディアや美容メディアがたくさんあります。その中で第一三共ヘルスケアの強みは何だろうと考えたときに、やはり製薬会社が発信するからこその安心感は最も大事にしたい。それを考えると、コンテンツをあまり乱発したくはないと思っています。

健康や美容に関するUGC(ユーザーが作ったコンテンツ)がありますので、それらに絡めてうちが作ったコンテンツをユーザーがシェアしたり、SNS上で紹介したりしていただけたらいいなと思っています。ユーザーがシェアしやすい最適な形は何か、今考えているところです。

――UGCは医薬品ゆえに、間違った情報が流れたときのリスクはありませんか?

あります。しかし、こちらから止められるものではありません。間違った情報に対して、「健康美塾」を読んでいる方が「そうじゃなくてこういうことだよ」と、「健康美塾」の記事をシェアしてくれると理想的だと思います。医療系では、そういうコンテンツが一番価値があると思っていますので。

――そういうユーザーの熱量は大切にしたいですね。

はい。やはりテーマとしては、悩む手前で楽しく読んでもらいたいというのがあるので。そこは創設時からぶれずに取り組めていると思います。

――これまで運営してきて、最も苦労するところや、解消していきたい今後の課題はありますか。

離脱率や直帰率をいかに下げるかといったことは、いろいろ検討しながら施策を講じようとしています。

――コンテンツで改善していく想定ですか?

それもありますが、解消に役立つツールがあれば、入れることも検討してみようと考えています。会員組織化は、直帰率を下げることに一役買ってくれるかなという期待もあります。

会員組織の運営も、経験豊富な企業に知識を借りながら回していきたいと思っています。そういった知識が共有できたり蓄えられたりするのも、会員組織化のメリットではありますね。

健康、笑顔でいられる時間を1分でも1秒でも長く

(5)
――今後、メディアをどのように育てていきたいと考えていますか?

「健康美塾」と第一三共ヘルスケアの情報ソースを信頼して、数あるメディアの中から選んで訪問してくださる方が増えるといいなと思います。

オウンドメディアといっても、アプローチする層が変われば伝え方も変わります。男性は数値をお伝えするほうがしっくりくるんです。女性は「あるある!」という共感を狙ってコンテンツを作ったほうが、よく読んでくれる傾向があります。そうした生活者の心理を混ぜてしまうと、ユーザーの方が「私のメディア」と感じられなくなってしまうので、あえて女性のみに特化させています。

健康、笑顔でいられる時間を1分でも1秒でも長くしたい。そのために、事前に健康に気をつけようと伝える。もしお悩みがあれば、「こういった商品がありますよ」と提案する。そして、適切に医療機関に受診をすすめる、というところも含めての情報発信ですね。

「健康美塾」は、商品を売りたいというよりは、みんながハッピーに生きられたらいいなという思いで作っているメディアだと自負しています。運営する者としては、それが世の中にどんどん浸透していくことが一番達成したいことです。

――PVやコンテンツのボリューム感というより、熱量ということですね。

メディアを大きく育てていきたいというのは、もちろんあります。でも先に、「健康美塾」というメディアとしての思いありきです。まずは、そこに共感いただけるファンを大事にするフェーズだと思います。

――会員とのリアルなコミュニケーションがカギを握っている気がします。

そうですね。会員の方々が、「健康美塾」のコンテンツをシェアしてくださる。それが、SNSやいろいろなコミュニティの中でポンポンと上がってくる状況を目指したいと思います。

今後どうしていくかも、オンオフを問わず会員の方々と対話をしながら、柔軟に対応していくつもりです。まだまだ、3年後、5年後にどうしていくかまでは見えないながらも、突き進んでいる感じですね。

\オウンドメディア運用を成功させたい方必見!/

編集者情報

ナイル編集部
ナイル編集部

2007年に創業し、約15年間で累計2,000社以上の会社にマーケティング支援を行う。また、会社としても様々な本を出版しており、業界へのノウハウ浸透に貢献している。(実績・事例はこちら

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