オウンドメディアを成功に導くメソッド【最強コンテンツの作り方 第8回】
もはや、ネットで集めた二次コンテンツを大量生産する時代ではありません。情報洪水の時代だからこそ差別化を図り、ユーザーに信頼される価値の高いオリジナルコンテンツが求められているのです。
本連載「最強コンテンツの作り方」では、情報収集からインタビュー、取材、企画、文章の作成方法まで、ユーザーの心をつかむコンテンツの作り方をお届けします。
第8回は、オウンドメディアが失敗する理由と、成功させるために押さえておくべきメソッドをご紹介します。
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目次
オウンドメディアブームは終わったのか?
2015年頃から浸透し始めたオウンドメディアが、転換期を迎えています。オウンドメディアを縮小したり中断したりする企業が増え、ヤフー株式会社も2019年9月末に、コンテンツマーケティング支援事業から撤退することを発表しました。
大きく期待されたオウンドメディアですが、うまくいっている企業は少ないようです。それだけ、オウンドメディアの運営は難しいといえます。
オウンドメディアは、コンテンツマーケティング施策の拠点となるメディアです。どの企業もオウンドメディアが広告でないことは理解し、ユーザー視点に立ったコンテンツでユーザーと信頼関係を築くことも理解していると思います。それでも、途中でオウンドメディアの運営を断念してしまう企業が増えています。成功している企業と失敗している企業の違いは、どこにあるのでしょうか。
今回は、コンテンツマーケティングの原点に立ち返って、オウンドメディアを成功させるためにはどうすればいいのか、改めて考えてみたいと思います。
マーケティングの3C
マーケティングには、Company(自社)、Customer(顧客)、Competitor(競合)の3Cという考え方があります。この3Cはオウンドメディアにも適用できます。
Company(自社)
情報を発信するには、まずCompany(自社)と自社の商材の特性について客観的に把握しておかなければなりません。
Companyを客観的に把握する方法のひとつに、「SWOT分析」があります。Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の頭文字を取ってSWOTと呼びます。
競合他社と比べて、自社の強みと弱みは何なのか、ビジネスを展開するにあたってどんな機会や脅威があるのかを洗い出します。その上で、コンテンツを作る際に何を訴求すべきか、弱みをいかにして強みに変えるかを考えます。
Customer(顧客)
Company(自社)の特性を把握するとともに、誰をCustomer(顧客)にするべきかターゲットを絞り込み、ペルソナを設定します。
ペルソナとは、企業にとって象徴的な顧客モデルのことをいいます。ユーザーの隠れたニーズや行動パターンなど、観察や調査で得られたデータを、一人のユーザーとして凝縮した人物モデルです。
ペルソナ作成のメリットは、おもに3つあります。まず、企業視点ではなく、ターゲット視点の物語が提供できること。2つ目はターゲットの理解が深まるので、共感を得る企画を考えやすくなること。そして、プロジェクトのメンバー間で、一貫したターゲット像が共有できるため、方向性がブレないようにすることができることです。
Competitor(競合)
マーケティングの3C、3つ目はCompetitor(競合)の把握です。ポジショニングマップを使って、自社のポジションを可視化します。
ポジショニングマップを作成することで、「自社の現在の立ち位置がわかり、目指す方向が見える」「競合テーマと競合相手が明らかになる」「空白の位置を発見し、新しい市場を打ち出せる」という3つのメリットが生まれます。
以上のマーケティングの3Cを明確に定めたら、次はオウンドメディアの役割と集客構造について考察します。
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オウンドメディアの役割
オウンドメディアには、おもに以下の4つの役割があります。
・課題解決
・ブランド訴求
・話題喚起
・資産化
ひとつずつ、順を追って見ていきましょう。
課題解決(ハウツーではない)
例えば、化粧品メーカーが自社の宣伝はしないで、ユーザー視点の「美容・美肌」に関する課題解決型のコンテンツを提供するとします。しかし、そこで「食事でできるシミ対策」「レフ板効果で美人に見せる!」「剃らなくてOK!ナチュラルな眉毛の作り方」といったハウツーコンテンツをいくらそろえても、差別化は難しいでしょう。ユーザー視点に立ってはいるものの、どこにでもあるまとめサイトのハウツー記事と差別化が図れていないからです。
その企業にしか提供できない情報でなければ、企業へのエンゲージメントにはなかなか結び付きません。ユーザーは、提供された情報にふれるものの、その企業だからこそ得られた情報ではないため、企業へのロイヤルティにつながらないのです。
アクセス数を重視するあまり、オリジナリティよりコンテンツの量産を優先することが、オウンドメディアが失敗する最大の要因だといえます。
ブランド訴求(建前ではない)
ブランド訴求とは、ブランド価値が創出しやすい長期的なストーリー戦略を描くことで、価格競争に巻き込まれないブランディングを図ることです。ユーザー利益主導のオリジナル情報を提供することで、信頼と期待を醸成し、一過性ではない固定ファンを育成します。
ただ、企業のオウンドメディアの場合、どうしても炎上やクレームを避けるために、「建前」のコンテンツになりがちです。しかし、建前ではない、ユーザー利益主導のオリジナリティあふれるコンテンツを作ることが大切です。
ファン化を狙うためには、オンリーワンの存在であることを訴求しなければなりません。最大公約数的な無難なコンテンツづくりに終始すると、どこにでもある退屈なコンテンツになってしまいます。ブランド力とはオリジナリティです。商材を持っている企業が、わざわざまとめサイトと同じような二次情報をかき集めることに、意味はないのです。
話題喚起(バズではない)
オウンドメディアからSNSで共感を呼ぶコンテンツを提供し、クチコミ化を促します。しかし、SNSでの拡散力、アクセス数、ユーザーとのエンゲージメントは、それぞれ必ずしも比例するわけではありません。もちろん、オウンドメディアを運営するにあたって、SNSの力を借りることは必須であり、むしろオウンドメディアとSNSはセットで考えるべきです。
しかし、オウンドメディアは、SNSによってコンテンツを拡散させることだけが目的ではありません。一過性の拡散ばかりを狙うのは、本末転倒です。SNSでバズコンテンツを狙うことは、広告を出稿するのと変わらないことと理解した上でやるべきでしょう。
資産化(継続・蓄積する)
資産化とは、オウンドメディアに継続的にコンテンツを制作・蓄積していくことで、メディアの価値を高めることです。一過性ではなく、時間が経つほど価値が高まるようなコンテンツを作ります。資産化されるコンテンツはエバーグリーン(常緑)コンテンツとも呼ばれますが、時間が経っても朽ちることのない、いつでも読める内容のコンテンツのことです。
ただ、ユーザーにとって役に立つ課題解決型のコンテンツであっても、まとめ記事のような二次情報ではコンテンツの価値はあまり高まりません。綿密なヒアリングや市場調査を基に、ユーザーが求めるニーズを見極め、オリジナリティに富んだ価値の高いコンテンツを戦略的に設計しなければなりません。
オウンドメディアの集客構造
オウンドメディアの役割を押さえたら、今度は実際に運営する上で、ゴール、ファネル、チャネルの3つの集客構造に合わせて最適なコンテンツを考えます。
ゴール
ゴールとは、「KGI(重要目標達成指標)」や「CSF(重要成功要因)」「KPI(重要業績評価指標)」を設定することです。
・KGI(重要目標達成指標)
KGIでは、主要なゴールを認知獲得にするのか、ブランド訴求にするのか、新規開拓にするのかを設定します。KGIが明確に設定されていないと、運営途中で迷走することになるので、必ず最初に決めておく必要があります。
・CSF(重要成功要因)
CSFでは、サイト認知が向上しているか、共感・興味関心度が高まっているか、サイトアクションが増えているかなど、何を達成したら成功したと評価するかを決めます。
・KPI(重要業績評価指標)
そして、KPIでは、KGIを達成するために、新規ユーザー数、総PV数、総UU数、参照トラフィック、オーガニック流入数、連携メディアでのリーチ、リピートユーザー数、滞在時間など、CSFで定めた指標を基に、具体的に設定します。
オウンドメディアでは、KGIの効果測定の成果が出るまでに、ある程度時間がかかるので、運営にあたって短期的にKPIで成果を見ていきます。
また、ゴールまでのプロセスは、「メディア育成期」「ファン獲得期」「メディア成熟期」の3段階のフェーズに分けて、PDCAを回すといいでしょう。
・メディア育成期
メディア育成期では、良質なコンテンツを発信し、見込み顧客との接触機会を増やします。プレスリリースを配信したり、外部メディア、SNSへの情報拡散を積極的に行ったりすることで、ターゲット層へコンテンツの認知を図ります。
・ファン獲得期
ファン獲得期では、魅力的なコンテンツを継続的に配信することで、コンテンツの認知を高めます。コンテンツにふれていく中で、情報への信頼やブランドへの共感を獲得していくことを目指します。また、SNSでの反応や対話によって、ユーザーとのエンゲージメントを高めます。
・メディア成熟期
発信するコンテンツに対して、ユーザーが理解し、価値を認めている時期がメディア成熟期です。ユーザーがインフルエンサーになってブランド支援を行ってくれるよう、有効な情報提供を継続します。
ファネル
ファネルとは、オウンドメディアに訪れたユーザーの態度変容のプロセスを見るための指標です。
具体的には、「訪問客」「見込み客」「新規顧客」「優良顧客」の段階をたどります。
入り口となる訪問客は、暇つぶしのユーザーや関心のあるユーザーなどに、課題や悩みの解決策を提示します。
見込み客にはさらに踏み込んで、比較・検討ができるよう、購買意欲を促すコンテンツを用意します。
見込み客を経て新規顧客となったユーザーには、今後も継続してリピーターになってもらうよう、より付加価値の高いコンテンツを提供して、満足度を高めてもらいます。
リピーターになった優良顧客には、さらに高額な商材の購入を促したり、利用頻度を高めたり、SNSなどで拡散・推薦してもらったりするためのコンテンツを提供します。
また、近年のオウンドメディアでは、コミュニティ化の重要性が高まっています。ユーザーの優良顧客化を図るための有効な手段が、オウンドメディアのコミュニティ化です。
情報が氾濫するネット時代において、いくら価値の高いオリジナルコンテンツを制作しても、一方的な提供だけではユーザーの優良顧客化を図ることは難しくなってきています。もはや、オウンドメディアだけを運営していれば集客できるというわけではないのです。
オンライン・オフラインを問わず、ユーザーと直接コミュニケーションを図り、コミュニティ化することで競合との差別化を図ります。オンラインなら掲示板、コメント欄や、会員制のサロンを設け、オフラインならセミナーやイベントなどを定期的に行うことで、ユーザーと直接コミュニケーションを図り、コミュニティ化していきます。
コミュニティ化は、「傾聴」「シェア」「参加」というプロセスで進めます。
・傾聴する
傾聴の段階ではまず、どれくらいのユーザーがコンテンツを消費しているのか、コンテンツへのアクションを見ます。続いて、ユーザーがコンテンツを好意的に受け取っているのか、否定的なのか、中立なのか、SNSやコメントなどでユーザーの感情を定量的に測定します。そして、コンテンツへの接触を通じてエンゲージメントを深められたか、コンテンツへの理解度を測ります。
・シェアする
効果的なシェアを促進するためには、ユーザーが直感的にコンテンツをシェアできるようになっているかをチェックします。効果的にシェアできる構造になっていなければ、シェアしたくなるコンテンツに逐次改良し、シェアしやすいインターフェイスにアップデートします。
そして、効果的なインフルエンサーになりうるのは、誰なのか把握します。さらに、そのインフルエンサーとつながり、より興味・関心を抱きそうなコンテンツを提供します。
・参加する
ユーザーとのコミュニケーションを最適化するために、まず、SNSやコミュニティに積極的に参加して、プロとしての回答をしていきます。また、SNSやコミュニティにおいて噂をされたら、噂の現場に積極的に関与します。さらには、ユーザーに関連しているコンテンツを提供することで、ユーザーに自分事化してもらいます。
チャネル
チャネルとは、ユーザーを集客するための媒体や流通経路のことです。基本的にはチャネルが多いほどユーザーは集まりやすくなります。その経路ごとの集客力を見極めることで、効果的な集客方法を打ち出すことができます。
上の図表では、フェーズを1~3に分けています。フェーズ1は、比較的コストをかけないで制作できるコンテンツ、フェーズ2はSNS施策です。フェーズ3は、予算や人員リソースに余力があれば検討してもいいでしょう。
・フェーズ1
フェーズ1のブログ、PDF、ニュースリリース、メールマガジン、ケーススタディ(事例)、Q&A、ホワイトペーパーなどは、社内の人員リソースさえ確保できれば、専門の外注スタッフに依頼しなくてもできるコンテンツです。自社でコンテンツを作る際に「おもしろいアイディアが出てこない」「ネタが続かない」などと思いがちですが、オウンドメディアにおけるコンテンツのカギは、企業が持つ商材のオリジナリティです。
オウンドメディアは、本来は企業みずからコンテンツを発信するものです。外注に丸投げではノウハウも貯まりませんし、長期的にはコスト高になり、費用対効果もかえって悪くなります。オウンドメディアのメリットを最大限に活かすためにも、社内リソースを確保することは必須です。
最初のプロジェクト設計は外部のプロに相談したほうが間違いはありませんが、慣れてきたら社内スタッフで回すことをおすすめします。できれば社内の責任者として、コンテンツの企画・執筆を管理するCCOを(チーフコンテンツオフィサー)を抱えるのが理想です。
また、コンテンツの配信本数は、SEO的には多ければ多いほどいいとされますが、質の低いコンテンツを大量生産しても意味はありません。重要なのは、配信本数の多さではなくオリジナルであること、最新情報が定期的に配信されていることです。
・フェーズ2
フェーズ2は、Twitter、Facebook、Instagram、YouTube、SlideShareなどのSNS施策です。オウンドメディアで制作したコンテンツを、SNSでも有効活用します。SNSは、外から新しいユーザーを呼び込むだけでなく、オウンドメディア内での回遊性を高めますので、導線設計も同時に検討します。つまり、オウンドメディアで展開するコンテンツは、SNSでの配信も同時に想定して制作します。今やSNSなくして、ユーザーに情報がリーチすることは困難です。
SlideShareは、PDFにした企画資料や営業資料を、スライド形式で見ることができるSNSです。特に、BtoBで浸透しつつありますので、ぜひ活用してみてください。セミナーやイベントなどで作成した資料や、オウンドメディアで紹介したコンテンツをSlideShareにアーカイブしておけば、認知獲得にじわじわと効いてきます。
・フェーズ3
フェーズ3は、動画、キュレーション、レビュー、ウェビナー(オンラインセミナー)、インフォグラフィックなどの施策です。特に、動画コンテンツは近年とても注目されていますが、比較的コストがかかるので、KGIとCSFを明確に定めた上で検討することをおすすめします。
キュレーションコンテンツは、多くの企業がオウンドメディアで扱っていますが、先述したように、どこにでもあるようなまとめ記事では、いくら大量に生産してもコンテンツ価値は上がりません。独自の切り口や視点があって、ユーザーに発見や気付きが与えられる場合にのみ、やるべきでしょう。
ビジョンのあるコンテンツを作ってこそ、オウンドメディアには価値が生まれる
オウンドメディアの運営は、片手間で成功するほど簡単ではありません。また、ビジネスに活かせるまでに、それなりの時間とコストがかかります。近道はないのがオウンドメディアです。もし、近道を目指すなら、広告を大量に出稿するほうがいいでしょう。
また、手っ取り早いからといって、ハウツーのまとめ記事を大量生産しても、企業の価値は高まりません。ハウツー記事で一過性のアクセスを獲得しても、企業のブランド価値やビジョン、専門性を伝えられるものではありません。
どんな企業にも、自社にしか持ちえないブランド価値やビジョンがあるはずです。多くのオウンドメディアがつまらなく、ユーザーの支持を得られずに撤退せざるをえなくなるのは、その会社が提供する、必然性のあるコンテンツを掲載していないからです。
たとえコンテンツの本数が少なくてPVが伸びなくても、オリジナリティの高いコンテンツを提供し続けるほうが、結局は企業ブランドの価値は伝わります。自社のUSP(独自のウリ)が何かを客観的に精査・俯瞰し、自社にしか提示できないビジョンのあるコンテンツを作ってこそ、オウンドメディアには価値が生まれます。それが、オウンドメディアを運営するメリットを、最大限に活かす唯一の方法なのです。
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