「CAREER HACK」が考える、旬な人を深掘りするためのインタビュー3つの軸

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「CAREER HACK」が考える、旬な人を深掘りするためのインタビュー3つの軸

ウェブ・IT業界で活躍する旬な人材をいち早く紹介する情報感度の高さと、仕事論や人生哲学といった内面の深い部分まで引き出すインタビュー術が評価されているメディア「CAREER HACK(キャリアハック)」。

業界からの信頼も厚い「CAREER HACK」の記事の根幹にある考え方は、「道・論・術」という3つの軸だといいます。全員が編集未経験だったという異色の編集チームは、いかにしてオンリーワンの企画力を確立したのでしょうか?

運営会社であるエン・ジャパン株式会社 デジタルプロダクト開発本部に所属し、「CAREER HACK」の編集長を務める白石勝也さんと、同編集部で編集・ライターを務める野村愛さんに、企画術・編集術について聞いてみました。

名物企画「7HACKS」では、第一線で活躍する人たちが日々実践していることを取材。これまで前田裕二、家入一真、古川健介、田端信太郎、佐藤航陽、ゆうこすといった著名人が登場した。

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ウェブサービスの一部から誕生

――「CAREER HACK」がスタートしてから現在に至るまでの流れについて教えてください。

白石:スタートしたのは2012年ですが、当初は今のようにメディア単体というスタイルではありませんでした。元々はウェブ業界に特化し、参加型コンテンツを集めたウェブサービスという立ち位置でスタートしました。コンテンツのひとつとして記事は掲載されていましたが、企業のデータベースやユーザーの声をアイデア投稿する参加型コンテストなどもありました。

――それは意外でした。そこからなぜ現在のようなスタイルに?

白石:「CAREER HACK」の立ち位置をあらためて見直し、どういうユーザーに向けてどういう形でやっていくべきなのか、あらためて検討しました。元々記事のクオリティには評価をいただけていたので、メディアとしてリスタートすることにしました。2014年頃のことです。

「CAREER HACK」編集長の白石勝也氏。

――「CAREER HACK」の現在のコンセプトは?

白石:テック業界で活躍する若い人たちを増やして応援していくことを目的に、第一線で活躍している人たちを取材して深掘るメディアです。これからの時代を担う若い人たちに向けて、活躍するために大切なことを伝えていきたいと考えています。

 

「CAREER HACK」編集部が掲げる指針
  • テック業界で活躍する若手人材を増やす、応援する
  • 「活躍」にフォーカスした、唯一のインタビューメディアとなる
  • 最も多く「活躍するための必要要件・考え方」が蓄積されている
  • ビジネス/テック業界から「取材されたい」といわれるようになろう

 

――現在のチーム体制が出来上がったのは?

白石:私がチームに入ったのもちょうどリスタートした2014年。その後、2016年に25歳以下の若手中心の編集部になり、新体制としてスタートしました。現在、チームは私を含め3名です。

――チームの皆さんは、元々編集を仕事にされていた方々ですか?

野村:いえ、実は全員が編集者未経験なんです。白石は、社内の別の部署で求人広告のコピーライターをしていましたし、私も別の業界からの転職組です。

白石:もうひとりの大塚というメンバーも、サイト運用やディレクター出身。裏を返すとまっさらな視点で、試行錯誤ができているのかもしれません。

「CAREER HACK」で編集・ライターを務める野村愛氏。

なぜその人にその話を聞くのか?

――「CAREER HACK」のインタビューに登場するのはIT業界の著名人や注目の若手起業家、さらにIT業界以外のユニークな人物など幅広いですよね。一方で、記事にはどこか共通した“CAREER HACKらしさ”を感じます。

白石:ありがとうございます。そう言っていただけるとすごくうれしいです。というのも、人選もそうですが、どんなテーマで話を聞くか、毎回みんなで頭を抱えながら絞り出していて…。

よく「基準は何ですか?」と聞かれるのですが、若い人たちの活躍に役立つテーマで話が聞けるかを、編集会議で時にメンバーとぶつかりながらも決めているんです(笑)。

野村:今はウェブを使っていない業界はほとんどないですし、テクノロジーを重視していない業界もないですよね。それなら、人選もウェブ・IT業界の枠にとらわれず、広げていってもいいのではないかと考えました。こういった議論のなかで、毎回取り上げる方も決めています。

白石:もしかしたら、非効率なのかもしれませんが、テーマと人へのこだわりがCAREER HACKらしさなのかもしれません。

その中でも見えて来たのが大きく3つのテーマで、「ビジネス」「クリエイティブ」「テクノロジー」です。活躍している人は、この3つに関して哲学を持っているように思います。それをどうとらえ、掘り下げていくか、ここが目指すところです。

――なるほど。そこからどのようにして取材対象者をピックアップしているのですか?

野村:取材したい人やテーマは、編集部員が日頃から情報をリサーチして集めています。情報収集の仕方は編集部員の個性が出るところ。例えば、私はテーマから考えることが多いです。テレビ番組やウェブメディア、雑誌の特集などから着想を得て、企画を練ることも多いです。

「企画するぞ!」と意を決して調べているのではなく、何気なく自分が触れているもの、見ているものの中から、今流行っているテーマはなにかを考えているんだと思います。

白石:編集メンバーの大塚は、Twitterなどソーシャルに張りついています。もちろん仕事ですよ(笑)。まだフォロワーは少ないのに、著名人と交流している人をフォローしておくそうです。

世の中では注目度がそこまで高くない方でも、つぶやきを見ておもしろそうなテーマをすくいあげて、取材オファーをしています。たぶんネタだけでいえば、彼のなかに数十件のストックがあると思います。

同時に、ネット上の情報を拾うだけでなく、一次情報を取りにいくことも大切にしています。まだ世の中に知られていないおもしろい人たちにランチやお茶をしながら話を聞いたり、過去に登場してくださった人たちにも会いにいって、今の興味・関心ごとや同世代で気になる人を聞いたりしています。

――おもしろいですね。記事の制作フローはどんな流れですか?

野村:それぞれが企画書を作り、誰に何を聞きたいのかをまとめます。「話を聞きたい人」リストと「話を聞きたいテーマ」リストを作成していて、この2つがうまく重なれば企画がGOとなります。

白石:実は私だけでジャッジしてるわけではなく、みんなで決めています。なぜこの人にこの話をこのタイミングで聞くのか。編集部員自身の言葉で語れると良い企画ですね。

まずは、企画書をSlackで共有し、取材すべきかどうか、声を集めます。ただ、Slackは流れが速いので、もれてしまう企画もあります。そういったものについては、毎週2回行っている編集会議で拾って検討します。

――企画書はどのような内容なのでしょう。

白石:記事のタイトルと、その記事を届けたいターゲット、その人の本質を引き出すためのキラークエスチョンと、そのための質問項目。これらをまとめてひとつの企画書として仕上げます。

実際の企画書の一部。記事は、「有川鴻哉が明かす「旅行サービス」での勝算」として公開された。

野村:最初は企画書づくりにも苦労しました。ボツになる企画ばかりで…。取材する人を紹介するだけの企画になりがちだったんです。 私たちがやりたいのは事例紹介ではなく、その人の仕事に取り組む姿勢や哲学、考え方と実践を伝えること。取材する私たち自身が、学びたい内容を企画書に落とし込むことが大切だと思っています。

白石:「CAREER HACK」は20代をメインとする若いみなさんを読者として想定しているメディアです。僕以外のチームメンバーは20代で、僕だけ30代。ですから、編集部のみんなが等身大で取材することが良い記事につながると考えています。

 

企画制作のフロー
  • 「話を聞きたい人」リストと「話を聞きたいテーマ」リストを共有
  • 編集部メンバーそれぞれが企画書を作成
  • 企画書はSlackで共有し、取材すべきかを全員でジャッジ ※意見が割れたら編集長判断
  • 流れてしまったものは毎週2回行っている編集会議で検討

 

「道」「論」「術」3つの軸を意識する

――取材対象者から引き出したい話についてもう少し詳しく教えていただけますか。

白石:インタビューで聞きたい話の軸は3つ。「道」「論」「術」と僕らは呼んでいます。テックっぽくないかもしれませんが(笑)。

「術」は、読書術とかノート術とかインプット術とか、短いスパンですぐに使えるノウハウのこと。「論」は、もう少し大きな話で、キャリア論やデザイン論、クリエイティブ論など、その人の持っている考え方のことです。「道」は、その人の生き方そのもの。人生哲学やぶつかってきた壁、その乗り越え方などです。ここに、一番深い本質的な学びがあると私たちは考えています。


――なるほど。「道」を引き出すのが一番難しそうですね。

白石:そうですね。例えば、起業家の家入さんに取材した「家入一真の7つの視点」という記事は、「道」の記事だと思います。ただ、すごく明確な線引きがあるかといえば、そんなこともなくて。編集部内でレビューするときなど、これは「道」だね、これは「論」だねと、話し合います。自分たちが考えやすくする、道しるべみたいなものかもしれません。なので、人によっては「道」と「論」で切り口を変えて、何度か取材をさせていただくこともあります。

この「道」や「論」を軸に取材した流れで、連載企画が生まれたりします。中でも連載企画「7HACKS」は、「CAREER HACK」がメディアとして大きく成長するターニングポイントになりました。

 

――ターニングポイントというと?

白石:「7HACKS」以前、「CAREER HACK」は伸び悩んでいた時期がありました。端的にあまり読まれなくなってしまっていたんです。ネタも出てこないし、掲載本数も落ちていた。

連載記事があると記事本数も安定しますし、型が決まると取材や執筆もやりやすくなります。また、テーマに統一性が出るので、読者にとっても読みやすく好評でした。

野村:何より、今まで取材できなかった人に取材できるようになったのが大きかったです。「7HACKS」ではさまざまな著名人の方にもインタビューさせていただいているのですが、それまでは「自分たちの手の届く人じゃない」「何を聞けばいいかわからない」という気後れがあり、ハードルを上げてしまっていたんです。それが「7HACKS」という連載テーマを設けたことで、「何を聞けばいいのか」が明確になり、飛び込んでいけるようになりました。

白石:「7HACKS」が好評だったので、現在は著名人に新人時代の話を聞く「ぼくらの新人時代」や、リーダーの迷いと決断に迫る「HARD THINGS STORY」などさまざまな連載企画が生まれています。 「ぼくらの新人時代」は野村発案の連載で、社内外の若い人たちにとってもすごく好評です。

野村:「ぼくらの新人時代」は、個人的にとても思い入れのある連載です。新人時代にいる自分だからこそやってみたいと思い、発案しました。今ぶつかっている壁や悩み、葛藤を取材でそのままぶつけてみたい。心のどこかで、自分自身の突破口を探していたのかもしれません。 取材では、私のリアルな悩みを質問しているので、半ば人生相談のようになっています(笑)。

うれしかったのは、今まさに新人時代を過ごしている、入社1~2年目の方々を中心にシェアしてくださっていること。記事を通じて、少しでも彼ら・彼女らの背中を押せたり、寄り添えたりできたらと思っています。

――連載による効果は数字にも表れていますか?

白石:表れています。記事の出る本数、PVも前年同時期と比べて倍に。ある月によっては4倍になっています。

「取材してほしい」と言われるメディアを目指して

――流入はソーシャルが多いのでしょうか。

白石:ソーシャルが多いですが、検索も意外と多くて、半々くらいでしょうか。昔からやっていて、記事がオリジナルというところが検索でも評価されているのだと思います。

――そこまで成長すると、次に求められるのは売上でしょうか。

白石:正直、オウンドメディアに直接的な売上を求めるのは難しいですよね。なので、目先の金銭的な利益を上げることより、いかにこれからの時代を生きていく若い人たちを応援できるかに重点を置いています。

運営元であるエン・ジャパンは、人材業界で多くのクライアントと取引きがあるので、たまに「CAREER HACK」で有料掲載したいとお話をいただくこともあります。すごくありがたくて、お応えしたい気持ちはありつつも、いまの若い人たちの活躍につながるかどうかが軸なので、そこにフィットするテーマしか取り上げていません。なので、PR記事はやっていないんですよね。

まずは、業界で尊敬される立ち位置のメディアになることを目指しています。まだまだ私たちが記事を届けた層に十分には届けられていない。ここに集中したいという話を、経営陣とも話しています。

――メディアとしての今後の展望や目標について教えてください。

白石:まだまだ至らない部分もあり、今まさにメディアとしてももがいているところです。ただ、最近では「CAREER HACK」は、業界報的な立ち位置として見てもらえるようになってきて、すごくうれしいです。なので「CAREER HACKで取材されること」が目標とされる、そんなメディアでありたいですね。

 

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