WebマーケティングにおけるKPIの考え方・立て方を解説
こんにちは。ナイルの今崎です。
この記事では、私が関わっているWebマーケティング領域におけるKPIの考え方・立て方について解説していきます。
KPIは、組織が正しい目標に向かって進んでいるかどうかや、その進捗状況を判断するための重要な指標です。「KPI改善=事業成長」といえるほど大切なトピックであり、しっかりと検討を重ねて設定する必要があります。
KPIを立てるときにありがちなのが、セッション数やCV数、検索順位を設定してしまうこと。これらはただの結果です。本来は、その結果数字を上げるための中間指標をKPIにしなければなりません。
そもそもKPIをどう設定すればいいのかは、事業や業務の内容によって大きく異なりますので、現場で感じているKPIについてまとめていきます。
なお、「KPIとは」という概念の説明は、検索すると良質な記事がたくさんあります。概念の説明は、それらの記事を読んでいただき理解を深めて下さい。
※疑問や不明点、「とりあえず相談したい」、「KPIの設計が難しい」などのお困りごとがありましたら、こちらの無料相談フォームよりお気軽にお問い合わせください。
目次
WebマーケティングにおけるKPIとは?
Webマーケティング領域において、KPIはプロジェクトや施策における成果を計測する重要指標となります。
KPIとは「Key Performance Indicator」の略称であり、日本語だと「重要業績評価指標」を意味します。一言でいうと、KPIとは「役割の計測指標」だと思っています。その人の果たした役割を、「どの数字で」測るのか、ということとほぼ同義のイメージです。
逆に「どの数字で測るのか」が定まっていないプロジェクトや施策は、どの程度、役割を果たしたのか計測できないため、正しい評価や判断ができません。
そのため「施策とKPIはセットで考える」のが、基本概念となります。
KPIは最終的なプロジェクトの目的を達成するための指標なので、まずは「目的」が策定されていることが重要です。この「目的」は、事業成長につながるものでなければなりません。担当者目線だと、つい自身の業務目的を設定してしまいがち。そうではなくて、「事業成長」の視点で目的を策定するといいでしょう。例えば、Webサイトを通じてサービスやプロダクトを販売しているのであれば、単に「セッション数を増やす」ことを目的にするのではなく、「契約につながる良質な問い合わせを増やす」ことを目的とするのが望ましいといえます。
KPIの概念図はロジックツリーとほぼ同義
目的を策定したら、KPIを考えていきます。目的からKPIを導き出す概念図は、いわゆるロジックツリーとほぼ同義ととらえてください。
具体的に解説していきましょう。
Webマーケティング領域で考えると、まずは最上位のレイヤーに「事業戦略(事業の目的)」を置き、その1つ下のレイヤーに、事業を達成するための「Web戦略(Webマーケティングの目的)」を置きます。さらに下のレイヤーにWeb戦略を達成したかどうかを測るKGIを置いて、その下にKGIを達成するためのKPIを置いていくという流れです。
なお、KGIとは「Key Goal Indicator(重要目標達成指標)」の略で、ビジネスの目標を定量的に評価する指標を意味します。
例えば、「事業戦略(事業の目的)」を「売上」に設定します。売上とは「数量×単価」で表されます。Web経由で獲得したセッションの中から成約できた数が「数量」です。
この売上を上げるためには、Webサイト経由でのコンバージョンを増やす必要があります。すなわち、「Web経由の成約数」がWebマーケティングの目的となります。
ここで注意すべきは、直接的に「売上」をコンバージョンにしなくてもいいということ。通販サイトを例にすると、ユーザーが商品を「お気に入り」に登録したらコンバージョンと見なすこともあります。あるいは「会員登録」をコンバージョンに設定してもいいでしょう。売上に転換する前の状態をコンバージョンにしても構いません。
設定したコンバージョンをどのような手段で達成するのかが、KPIになります。なぜKPIを立てるのかというと、KPIを定めないと目的が独り歩きしてしまう可能性があるからです。
売上目標を1億円とした場合を例にして考えてみます。1000万円の商材を10社に販売して1億円を達成するのか、100万円の商材を100社に販売して1億円を達成するのかでは、意味合いは大きく変わってきます。会社としては将来の事業成長を見据えて「1000万円を10社に売る」戦略を想定しているのに、現場のメンバーがそれを理解できていないと「100万円を100社に売る」戦略を実行してしまうかもしれません。KPIをしっかり設定しておかなければ、このように事業戦略と現場とのズレが生じる可能性があるのです。
KPIが定められていれば、ズレが生じたときもいち早く気づいて軌道修正をかけられます。営業方法、Webサイトの見せ方や打ち出し方、コンテンツの中身などを精査して、事業戦略に合った落とし込みができます。
このように、最上位レイヤーの事業戦略から現場業務までをつなぎ、ビジネスを加速させることがKPIの役割なのです。
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KPIを立てるのに必要な考え方
前段で「KPIの概念図はロジックツリーとほぼ同義」だとお伝えしました。つまり、KPIを立てるためにはロジックツリーから考えればいいといえます。
ロジックツリーを考えるポイントは、「抽象」と「具体」の両面でイメージしていくことです。ロジックツリーは一度作って終わりではなく、全体像を作ってからあらためて見直し、違和感がある箇所をチューニングしていくことが大切です。
ロジックツリーは課題を分析し、原因を見つけて解決につなげるために活用されます。しかし、課題をただ切り分けるだけでは意味がありません。重要なのは「その課題を解決することで事業成長につながるのか」という点です。
適切な課題を抽出し、解決に導く上で便利なフレームワークが「2W1H」です。「Where(どこで)」「What(何を)」「How(どのようにして)」という3点で考えていきます。
Webマーケティングを例にしましょう。
- Where:サイトのどこで、あるいはマーケティングのどのタイミングで問題が起きているのかを特定する
- What:どんな項目に問題があるのかを考える
- How:どのようにして解決していくのか仮説を検討する
どこで問題が発生しているのか、何が問題なのか、どうすればそれを解決できるのかという3ステップで考えていけば、自ずと達成すべきKPIがわかるでしょう。
さらに、「2W1HとKPI検証による改善サイクル」を活用することをおすすめします。
改善サイクルでは、まずは「売上が落ちている」「コンバージョンにつながっていない」といった全体の問題をつかんでおきます。そこから、問題の原因になっているのはどこなのか、「集客」「接客」「CVフォーム」「営業対応」といった「Where」を特定して細分化していきます。
次は「What」に着目です。集客だと「オーガニック流入」「広告流入」といった要素になるでしょう。接客だと「コンテンツの内容」「デザイン」、CVフォームだと「入力項目」「導線」、営業対応だと「対応スピード」「営業資料」といった項目があがるでしょう。
この「What」の変化を計測することが、KPIになります。集客ならセッション数、ユニークユーザー数などが、KPIになるわけです。
そして「Where」「What」がクリアになれば、「How」として「解決策」「優先度」「スケジュール」「担当者」「実施日」「調整」を決めていきます。施策を実行したら、「施策検証(取り組み成果の検証)」「KPI検証(重要指標の検証)」「課題仮説&改善」を忘れないでください。
しっかりKPIを検証することで、改善サイクルを回すことができるようになるはずです。
「課題解決のフレームワーク」や「改善サイクル」を活用して、自社事業をぐるぐると考えていってみてください。繰り返し考えて数字を見ていくことで、適切なKPIが定まってきます。そうすれば、事業の成長速度が一気にドライブしていくはずです。
Webサイトの役割は「接客」に例えるとわかりやすい
WebマーケティングにおけるKPIを設定するうえで、そもそもWebサイトにはどんな役割があるのか、しっかり考えてみましょう。
まず、Webサイトに初めて訪れた人には、どのような事業をしているのかを伝える役割があります。もし自分たちが高額なお客さまとの接点を持ちたいのであれば、Webサイトもそういう雰囲気にしないといけません。「1万円からご相談ください」といった情報は出せません。接客担当者がやってくれることを24時間やってくれるのが、Webサイトの役割です。
では、接客を担当するWebサイトで何を強化すべきでしょうか。お客さまに対して、接客担当者がどうアプローチすべきかを考えれば、自ずとKPIも設定できるようになります。
そのため、Webサイトでは、「取り組んでいる内容」を説明できているか、「費用感」「他社との違い」「事例」を伝えられているのかといった点をチェックする必要があります。
ここまで分析を行った上で、KPIを考えていきます。初回接触を目的とした基礎コンテンツであれば、「ちゃんと読んでもらえたか」「再訪してもらえたか」といった点が目的となります。計測するための指標(KPI)は、「新規集客数」や「再接触数」「再接触率」「回遊率」「CVアトリビューション(貢献度)」となるでしょう。
これは、接客担当者への要望と同じことです。「新規のお客さんを増やしなさい」であればKPIは新規のセッション数が考えられます。「しっかり事業理解を深めてもらう」であれば、KPIをサービスページへの集客数や遷移数(または率)に設定してもいいでしょう。
どの数字で評価するのか、数字でしっかり落とし込むとKPIが決まってくるのです。
KPIの探し方・捉え方をコンビニの導線で把握する
さらに、Webマーケティングに関するKPIのイメージをつかむために、コンビニを例にしてみましょう。
■前提となる行動傾向の条件
- 入店後、レジから見て、反時計回りで大回りする人が単価高い
- すぐに本を立ち読みする人は単価が低い
- 商品棚に向かう人は購入数が少ない=単価が低い
- 弁当を買う人は飲み物を買う割合が高い
- 弁当を買う人は単価が高い
- 20、30、40代の男性の単価が高い
コンビニで考えると、CVはお客さんがレジに行くことになります。ここで、汎用的なKPI案にコンビニ経営を落とし込むと、KGIは売上になり、KPIは来客数×単価になります。とは言え、これでは売上を構成する要素に分解できておらず、改善アクションにつながりません。
売上を構成する内容をピックアップし、その数字の変化を追うと、下記のようになります。
■注目すべき行動傾向
- 入店後、反時計回りで大回りする人が単価高い
- 弁当を買う人は単価が高い
- 20、30、40代の男性が単価高い
■行動傾向に合わせたKPI
- KGI:売上
- KPI:反時計回りで大回りする人の数(および率)
- KPI:弁当買った人の数(および率)
- KPI:20~40代男性の数(および率)
これらは、あくまでも前提の条件傾向を元に策定したKPIです。10、20代の女性や、高齢者向けの施策を強める場合は、まったく異なるKPIになります。つまり、目的によってKPIは異なってくるのです。
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KPIの参考例
KPIについて、「BtoBサイト」「BtoC向けサービスサイト」「SEO記事主体のオウンドメディア」「メディアサイト」「メーカーサイト」「ECサイト」「サブスク型サービス」に分けて、参考例をご紹介します。
※あくまでも「例」です。プロジェクトの「目的」や求める「役割」によって実際のKPIは異なります。なお、今回は例としてKPIを複数立てていますが、理想としてはKPIは3つくらいに絞るのがおすすめです。
■前提
- 事業KGI:売上
- 事業KPI:数量×単価
- WebのKGI:CV
- WebのKPI:セッション数×CVR
■言葉の定義
- 再訪問:Google AnalyticsやAdobeAnalyticsなどのログ解析ツールで計測する際の「再訪問」
- サービスページ:サービス内容や事例などを紹介したページ
- 製品詳細ページ:個別商品の紹介をしているページ
- 訪問者数:セッション数、ユニークユーザー数など(目的により異なるため、ここではどちらになるかは定義していない)
BtoBサイト ケース1
- KGI:問い合わせ数
- KPI:問い合わせフォームのクリック数&入力完了率
- KPI:サービスページの閲覧数&問い合わせフォームのクリック率
- KPI:新規訪問者数、再訪問者数、再訪問率
BtoBサイト ケース2
- KGI:営業上、有効な問い合わせ数(PRなど認知度向上の施策と合わせて「受注率向上」や「質の向上」を含む場合)
- KPI:取得したい項目における数(「役職」「業種」「予算」「時期」「対象サービス」※) 例)予算50万円、500万円、1,000万円など。ターゲットとしている顧客層からの問い合わせ数の状況計測
- KPI:指名検索を含む数&率
- KPI:問い合わせフォームにて「貴社のことを知っていた」にチェックをした企業の数
- KPI:事例ページの閲覧数
- KPI:サービスページの閲覧数
- KPI:資料ダウンロードやセミナー申込み実績のある企業の再訪問数&再訪問率
※サードパーティツールを使うことにより、資本金や売上などより多くの企業情報取得が可能
BtoC向けサービスサイト(問い合せや利用申し込みを目的としたサイト)
- KGI:問い合わせ数
- KPI:問い合わせフォームのクリック数&入力完了率
- KPI:サービスページの閲覧数&問い合わせフォームのクリック率
- KPI:新規訪問者数、再訪問者数および再訪問率
- KPI:資料ダウンロード数
- KPI:メルマガやLINEなど、自社とつながった数
SEO記事主体のオウンドメディア
- KGI:訪問者数
- KPI:organic経由セッション数(全体&新規)
- KPI:サービスページや商品詳細ページへの遷移数&遷移率
- KPI:各記事に設置したCTAバナーのクリック数(複数バナータイプがある場合は、CTAバナー種類ごとに計測)
- KPI:全体CV数のうち、SEO記事が初回接触となった数&率
メディアサイト(読者の訪問数により広告収益を得ているようなサイト)
- KGI:PV数
- KPI:訪問者数(読者の定着を計測したい場合は「再訪問者数&再訪問率」も計測)
- KPI:カテゴリ別、ジャンル別、テーマ別などの計測もあり
- KPI:PV/SS(一人あたりのページ閲覧数)
- KPI:離脱率(※1) 全体、カテゴリ別、ジャンル別、テーマ別などに分けて計測
- KPI:記事別の読了率(※2) GTM(Googleタグマネージャー)などで計測
※1 さらに詳細に記事別の離脱や読了率などを計測することで健康状態の計測精度が上がります。なお、離脱率やPV/SSは、熟読しているケースや迷っているケースなどがあり得るため、単に「多い=Good」「少ない=Bad」とは言えません。離脱率だけ、PV/SSだけでは、Webサイトの健康状態を見誤ってしまうため、総合的な観察が必要です。
※2 全体把握ではなく個別把握になるため( )記載にしております。全体感はPV/SSや離脱率で把握しつつ、メディアサイトは記事への満足度が重要な指標となりますので、記事個別の読了率の計測、または、カテゴリ別やテーマ別の読了率の計測をあわせて行うことを推奨します。
メーカーサイト(製品カタログ情報のようなサイト)
- KGI:訪問者数
- KPI:訪問者の内訳(新規訪問者、再訪問者) ※読者の定着を計測したい場合は「再訪問者数&再訪問率」も計測
- KPI:製品カテゴリ別、ジャンル別、テーマ別などの計測もあり
- KPI:商品詳細ページの閲覧数
- KPI:指名検索数&指名検索率
- KPI:PV/SS(一人あたりのページ閲覧数)
- KPI:離脱率 全体、カテゴリ別、ジャンル別、テーマ別などに分けて計測
- KPI:資料ダウンロード数
- KPI:関係会社やサイトからの訪問者数(外部メディアへ掲載やパートナー、代理店との連携などがある場合)
ECサイト
- KGI:購入完了数(決済された数)
- KPI:カートへ入れた数、購入するクリック数
- KPI:商品詳細ページの閲覧数
- KPI:お気に入りクリック数(※1)
- KPI:レビューや口コミの閲覧数(※2)
- KPI:訪問者数(全体、TOPページのみなど)(※3)
※1 お気に入りしていた人のほうが、お気に入りをしない人よりも購入率が高いという場合を想定
※2 レビューや口コミを見た人の購入率が見ない人よりも高いという場合を想定
※3 TOPページは主要キーワードや指名キーワードが多いため分けて計測
サブスク型サービス
契約前よりも契約後の方が事業上重要なため、契約後の例として記載している。
■契約後
- KGI:会員数
- KPI:継続期間(金額プランが複数ある場合は、金額プラン別の継続期間の傾向把握などもあり)
- KPI:解約率(可能であれば、契約から解約「=チャーン」するまでの期間を合わせて計測)
- KPI:利用頻度
- KPI:継続率(無料お試し期間などがある場合。「無料お試し」から「有料での継続契約」への転換率)
- KPI:契約プラン別契約数(金額プランが複数ある場合は、契約プラン別の契約者数傾向)
■契約前
- KGI:会員登録数
- KPI:会員登録フォームクリック数&入力完了率
- KPI:契約プランページ(料金ページ)の閲覧数、および会員登録への遷移数&遷移率
- KPI:PV/SS(特に商品一覧や商品詳細、サービスページなどにおけるPV/SS)(※1)
- KPI:キャンペーンページの閲覧数(※2)
- KPI:無料情報への接触数(※3) 例)無料視聴、資料ダウンロードなど
※1 商品一覧や商品詳細をたくさん閲覧している人のほうが、少ない人よりも会員登録率が高い場合を想定
※2 キャンペーンページを閲覧した人のほうが、閲覧していない人よりも会員登録率が高い場合を想定
※3 無料視聴が多い・資料ダウンロードが多いほうが、しない人と比べて会員登録率が高い場合を想定
KPIを考えるとビジネス理解が深まる
KPIは、事業戦略と現場業務のズレを防ぐ重要な要素です。適切に設定しなければ、ただ目の前の業務をこなすだけで満足する独りよがりな指標になってしまいます。事業戦略から紐づくロジックツリーで自社の課題を分解し、事業成長につながるKPIを考えていきましょう。
KPIを考えるには、物事を全体俯瞰した上で分解して計測する、という思考が必要です。具体的に計測する手段(方法)も想定するスキルも必要です。全体(抽象的なもの)を個別(具体的なもの)に分解して解決を図るため、「抽象と具体の思考」および、「課題解決の思考」が磨かれることになります。これは自社の事業を俯瞰して捉える力を身につけるということでもあります。
KPIを立てられるようになると、ビジネスパーソンとして必要な基礎能力が磨かれ、その後の成長を後押ししてくれることになるでしょう。
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記事担当:今崎善秀
最適なKPIってどう考えればいいのだろうとお困りの方へ