ワークマンファンのコンサルタントがワークマンのWebマーケティングの魅力を語る

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ワークマンファンのコンサルタントがワークマンのWebマーケティングの魅力を語る
遠山 直人(とおやま なおと)

著者情報

コンサルティングユニット|遠山 直人
Webディレクターとしてサイトリニューアルから、CMS導入、コンテンツ企画まで、幅広いプロジェクトを担当した実績多数あり。SEOコンサルティングを中心とした改善提案に従事。Webデザイナーの経歴を活かしたビジュアル改善、UI/UX改善も得意とする。

※本記事は、2020年公開当時の情報を基にした記事です。

作業着やアウトドアウェアなど高機能な商品が驚くような低価格で購入できるとあって、その認知は屋外作業着ユーザーのみならず、多くの一般層に拡大しているワークマン。

なんとあの有名女性誌「Cancam」で特集を組まれるほど、性別を問わずさまざまな方たちから人気を集めています。

今回はWebマーケティングのコンサルタントとしてワークマンのマーケティングから学ぶことがあったので、それをまとめるとともに今年オープンしたばかりのECサイトにWebマーケティング(SEO)施策をご提案していきます。(本記事はワークマンさんに掲載許可をいただいています)

ワークマンファンのコンサルタント遠山がお届けします。

この記事のポイント

  • 自社サービス、自社商品のファンを大切にしながら、事業を成長させていくヒント
  • プラットフォームから抜けて自社ECサイトを立ち上げる場合は、自社ECサイトならではのユーザーメリットがあるのかを考えること

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ワークマンが楽天市場から撤退し、独自のオンラインストアを立ち上げた背景

まずはじめに、ワークマンオンラインストアの背景からお伝えします。

2020年2月末、それまで出店していた楽天市場を撤退し、3月16日、ワークマンは自社独自のオンラインストアをオープンしました。配送方法は従来の配送方法の他に、店頭受け取り(クリック&コレクト)を採用しているのが特長です。

2020年7月末時点で全国に880店舗(ワークマンワークマンプラス合計)ある既存店舗を活用することで、送料無料を実現しています。低価格で商品を提供することに拘るワークマンらしい取り組みで、実際店頭で受け取るユーザーの方が多いそうです。

 

ユーザーメリット

・配送手段を自宅受け取りと店舗受け取りから選べる(店舗受け取りは配送料無料)

・店舗に在庫があれば最短3時間で受け取り可能。

・店舗在庫情報も公開しており、取り置きすれば直接店舗で商品を確認して購入が可能。

 

ワークマンの楽天撤退は大きなニュースになり、さまざまなメディアで取り上げられています。

現代は商品だけ良ければ売れるわけではない

社内でも私服はよくワークマンで買っているという人もいます。

ここまでワークマンが注目を集めている要因は、高機能なのに低価格な製品力だけではありません。現代のマーケティングは商品だけがよくても、なかなか売れ続けるのは難しいのです。

そこで今回はワークマンのマーケティング(主に情報発信)に重きをおいて解説していきます。現在ECサイトを運営している方や、今後プラットフォームを抜けてECサイト運営を考えている方に、なにかヒントになれば幸いです。

ワークマン 店頭 シューズ

自社商品のファンを大切にしよう

字面だけ見ると当たり前のことを書いているようにみえますが、ファンを大切にすることをやり切っている企業はどれほどあるでしょうか。

ワークマンには公式アンバサダーというポジションがあり現在20名の方が活躍されています。アンバサダーとは、ワークマンのコアユーザーでブログやyoutube、SNSなどで日常的に情報発信しているブロガーの中からワークマンが公式に認定された方々です。

ワークマンも公式に「アンバサダ―マーケティングを強化する」と発表していました。

 

アンバサダーはワークマンの商品開発から参加し、ユーザー視点でのアドバイスを行ったり、SNS上で新商品情報を発信するなど、マーケティング面で大きく活躍されています。

ワークマンのオンラインストアでもアンバサダーの方が日々ブログコンテンツを更新されています。

 

▼ワークマンアンバサダーのうち、二名がワークマンブログを執筆しています

ワークマン アンバサダー

また、アンバサダーだけでなく、コアなファンによる情報発信もSNSやyoutubeで日々盛んに行われています。

 

まずはリピーターにお礼を伝えるところから

『ファンベース』という有名な書籍があります。

なぜファンを大切にすることが重要なのか?それは『ファンベース』によると以下の点からです。

 

①ファンは売り上げの大半を支え、伸ばしてくれるから

②時代的・社会的にファンを大切にすることが重要になってきたから

③ファンが新たなファンを作ってくれるから

 

大げさな表現に見えるかもしれませんが、ファンは自分たちを大事にしてもらえると本当にうれしいものです。その企業が彼らにとって1つのコミュニティになります。ファンの声をすべてうのみにするのではなく、ファンの意見に耳を傾ける、という感じです。

 

いきなりワークマンのアンバサダーを真似するのは難しくても、以下のようなことならまずは始められるのではないでしょうか?

・自社のヘビーユーザーに開発秘話など、裏話を共有する

・新商品が出たら、まずはヘビーユーザーに試供品をお届けし、日頃からのお礼をお伝えする。可能ならば意見をもらう

 

BtoBの場合は、

・定期的にセミナーを開催している場合は、普段からお付き合いの長い企業さまに、たとえ不参加でもセミナーの録画をプレゼントする。(見るように押し売りはしない)
→もし興味を持っていただけたなら、他にどんなセミナーなら興味があるか聞いてみる

・新規顧客獲得だけではなく、既存ユーザーのためにセミナーを開く

などがあげられると思います。

既存ユーザーへの手厚いフォローや、ユーザー会などはLTVを伸ばすことにもつながるでしょうし、「あそこのツールはフォローが手厚いからおすすめだよ」というように、ファンがファンを呼んでくれることにもつながります。

 

商品はそのままでも情報発信の切り口で、お客様を広げられる

ワークマンは情報の広がり方、情報発信の切り口が大変興味深いです。

ワークマンから学べる情報発信について2点、ご紹介します。

 

①商品はそのままでも、他の層に売れる

ワークマンの「厨房で滑らない靴」が、妊婦さんや小さなお子さんがいる女性の間で人気になったことがありました。
これまで単純に、「作業用」「職人向け」という視点だけで情報を発信をして販売していたら、厨房用の靴が「妊婦にも使える!」という情報の広がり方はしていかないのではないでしょうか。

商品は何も変えていないのに、これまでターゲットではなかったような方にも響くのが重要なポイントです。

▼滑りにくいシューズの店頭ポップ

滑りにくい靴の店頭ポップ

「厨房用の靴」自体は商品として変わりませんが、それが「妊婦さんも安心」「小さなお子様をよく抱っこする方に安心」という伝わり方が違うだけで、厨房以外の場所の人にも購入される商品になったのです。(2018年3月から、妊婦さん向けの滑り止め靴も販売されています)

商品はそのままで、訴求の切り口を変えて売れるようになった事例です。これはなかなか高度なマーケティングだと思います。

②ブログでの情報発信

いきなり上記のように自社の既存商品の価値をこれまでターゲットではなかった人にお届けするのは難しいかもしれませんが、ブログでの情報発信ならば参考にしやすいかもしれません。

ワークマンブログでは、使用感をすごく丁寧に伝えていて、店頭に行かないとわからないような細部のところも、寄りで写真を撮って、「こうなってますよ」と説明してくれています。

たとえば、レインコートの場合、裏地を映して、生地の縫い目から雨水の侵入を防ぐデザインになっていることを伝えてくれています。

ワークマンブログ

 

ほんの、ひと手間ですが、これがあるかないかで、品質に対する印象が変わりますよね。

 

「ほんのひと手間」は何からすればよいか?

恥ずかしながら弊社のサイトにも一部あるのですが、画像が全くない解説記事などを見かけます。読者からすると、テキストだけでは理解するのは難しいもの。

画像1枚用意するかどうかで、読者の理解は深まります。

また、記事を執筆する際には、できるだけ複数人に社内確認してもらうのもよいでしょう。
そうすることで、自分が気づかなかった「こんなところを読者は気にするんだ」ということに気づけます。

たとえば、本記事も『ファンベース』の書籍の話を追加したのは、編集メンバーと「ワークマンさんのアンバサダーの事例を知って、ファンと一緒にマーケティングに取り組みたいと思った方が、参考にできる情報を追加したいね」という話からです。

 

もしECプラットフォームを出る予定ならば、自社ECサイトだからできる「便益」を必ず持とう

楽天やAmzon、ZOZOTOWNなどのECプラットフォームはとても便利ですが、企業の中にはプラットフォームを離れて、自社ECサイトで販売していくことを考える企業もいらっしゃると思います。

その場合、必ず考えておいた方がよいのは、「自社ECサイトになることで、どのようなメリットがユーザーにあるのか」です。

店舗の在庫が確認できる

ワークマンでは欲しい商品をECサイトで見つけたら、近くの店舗に在庫があるのかどうかもECサイトで確認できます。これは無印良品などのECサイトでも同じようにできますが、楽天やAmazonなどのプラットフォームでは確認できません。

自宅まで届けてもらうのも便利ですが、ワークマンの商品の中でも靴などはやはり試着してみたいですし、アウトドア製品はサイズ感など実際に確かめたかったりもします。よってワークマン店舗への用事がないわけではないのです。

そのため、ECサイトで気になる商品の在庫を確認できるのは大変便利なのです。近くの店舗に在庫があれば、実際い仕事帰りにでも寄って購入できます。

このように、自社でECサイトを始めるならば自社ECサイトだから得られるユーザーにとってのメリットもなければいけません。

ECサイト/ブログはどうすればもっと集客できるか

これだけユーザーに魅力が伝わるワークマンなので、ECサイト/ブログも後発ながら、SEOで流入獲得の余地があります。

ブログについて

ワークマンブログでは、アンバサダーのサリーさん、山田耕史さんを中心に、旬なアイテムをピックアップし、使用感やコーディネート例などを紹介しています。またアイテムの機能特長の解説も非常に分かりやすく、いつも購入意欲をくすぐられます。

今後改善をおすすめする点としては、ブログ記事のタグをユーザーニーズに合わせて細かく設定することをお勧めします。商品ブランドの他に、機能性、用途、悩み、季節性、価格帯なども意識して整理すると、ユーザーが興味のあるタグから関連アイテムを見つけやすくなります。

例えば「防虫加工シャツの女子の着こなし方」に関する記事であれば、「防虫」「アウトドアウェア」「女子コーデ」「FieldCore」といったタグになります。

 

また、ページタイトルがユーザーの検索キーワードを多く含んでいないため、その辺りを意識してページタイトルを設定すると、ページへの集客数がより高まります。ページ共通の記述はタイトルの後半に配置するとページ内容がユーザーに伝わり易くなります。

現状 :ワークマンオンラインストアブログ ワークマンの虫を寄せ付けないシャツ!ワークマン女子の着こなし方も伝授

改善例:虫除け対策に防虫加工シャツ!ワークマン女子の着こなしも伝授|ワークマンオンラインストアブログ

オウンドメディアならではの商品訴求

防水、撥水、冷却、伸縮性など、ワークマンのアイテムは機能性への要望が非常に多いため、これらの機能に関する訴求はとても重要になります。

すでにアンバサダーを始め多くのユーザーがアイテムの使用感について多くのメディアでを情報発信していますので、オンラインストアではユーザーが表現しにくいスペックや機能の詳細な情報発信に取り組んではいかがでしょう。特に伸縮性や防水性といった機能の説明は、動画型式での訴求がより効果的です。

季節性の高い商品や新商品はオウンドメディアの情報発信が重要

梅雨時期のレインウェア、夏場の速乾アンダーウェア、冬の防寒ウェアなど、季節性のあるアイテムを多く取り扱っています。

これらのアイテムはファンの情報発信を待っていると、話題になるタイミングが遅れ、旬な時期を逃してしまうことも考えられるため、自社ブログメディアで先行して取り上げることで、早めに話題作りを行うことをお勧めいたします。

ユーザータイプ別の商品訴求

ワークマンの商品はその機能性の高さから、本来想定していた利用シーンを超えて、様々な用途で活用されることが多くあります。

先ほどの例のように、厨房用のスリップ防止シューズが妊婦に好評で愛用されているなどはよく知られています。このような特定ユーザーのニーズをオンラインストアに取り入れるために、妊婦など特定のユーザーにオススメのアイテム特集記事を用意したり、オンラインストアのアイテムタグを新たに用意するなど、同じ悩みを持つユーザーが商品を探しやすくする工夫も重要です。

また、取り扱いアイテムが多く多岐にわたるため、商品のカテゴリ分類は常に分かりやすく整理されている必要があります。


まとめ

今回はワークマンのマーケティングで参考になるところと、ECサイト/ブログの改善案を書きました。ファンと一緒に取り組む姿勢や、自社ECサイトを立ち上げることでユーザーにとってもメリットがある点など、とても勉強になります。

多くのユーザーによる積極的な情報発信は、商品に魅力があることがまず前提にあります。購入することで得られる満足感を多くの人に体験して欲しいという思いによるものでしょう。今後も魅力ある商品づくりを継続するとともに、ワークマンならではの取り組みで、より多くの人に商品の魅力が伝わるメディアに発展されることを陰ながら応援しています。

 

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編集者情報

ナイル編集部
ナイル編集部

2007年に創業し、約15年間で累計2,000社以上の会社にマーケティング支援を行う。また、会社としても様々な本を出版しており、業界へのノウハウ浸透に貢献している。(実績・事例はこちら

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