【#ナイルの本棚】2020年3~4月の紹介書籍まとめ
Content HubのTwitter(@cont_hub_com)で公開中の、ナイルのコンテンツチームが編集者/ライターの方々に役立てていただきたいおすすめ本を紹介する企画「#ナイルの本棚」。
Twitterの140字では紹介しきれないので、2020年3~4月にかけて公開した本のレビューを「増補改訂版」として改めてお届けします!
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目次
100人のうちの1人でもいい。熱狂的に好かれるためのヒント
【こんな人におすすめ】
・商品やサービスの企画に携わる人
・強いチームを作りたいと考えているマネージャー
ぷしゅ よなよなエールがお世話になります
井手直行(東洋経済新報社)
ビールが好きだからという理由でこの本を手に取ったのですが、読んでみるとビジネスのヒントがあちこちに。 著者は、ヤッホーブルーイング代表取締役社長である井手直行氏。ヤッホーブルーイングは長野県軽井沢町に本社を置くビール会社で、同社のよなよなエールというビールを知っている人も多いと思います。
この本で書かれているのは、地ビールブームの終焉からヤッホーブルーイングがどん底に陥り、そこから11年連続増収増益(2016年当時)にまで回復した話。そこには、あらゆる業種で通用すると思われる、チームづくり、企画、プロモーションなどのヒントが散りばめられていました。
例えば、多くの人に広く薄く受け入れられそうな商品を作るのではなく、
・一部の人でいいので強く刺さる商品を作る
・ファンとふれ合って熱狂的なファンを増やす
・興味を持ってもらえるような名前をつける
といったことなど。
「小さい会社は、一〇〇人のうち一人から熱狂的に好かれることが大事です」
本書に書かれているこの言葉は、ウェブコンテンツにもいえるのではないかと思っています。
(富江弘幸 @hiroyukitomie)
情報過多時代に暮らす生活者のためのコンテンツづくり
【こんな人におすすめ】
・売上が伸びない、安定しない、落ちてきた…と悩んでいる人
・キャンペーンやバズ狙いといった単発のコンテンツ施策に行き詰まりを感じている人
・顧客に愛情を持ち、彼らにたくさんの有益な情報を伝えたいと考えている人
ファンベース ――支持され、愛され、長く売れ続けるために
佐藤尚之(筑摩書房)
いつも相手を深く思い、丁寧に語りかけてくれる「さとなお」こと佐藤尚之氏の著書。
どんな大切な情報であっても、吹きすさぶ砂嵐の中の小さな一粒の砂程度の存在となってしまうほどの情報過多時代。私たちは、情報伝達において非常に困難な状況下にいます。
本書は、そんな時代に必然となる、生活者(情報の受け手)へのアプローチ「ファンベース」という考え方を解説しています。
「ファンベース」とは、企業やブランド、商品が大切にしている価値を支持してくれる生活者を「ファン」と位置づけ、彼らを支持母体(ベース)とし、中長期的な売上や企業価値の向上につなげていくというもの。
本書で語られている生活者本位の発想やメディアニュートラルの重要性は、コンテンツを作るとき、伝えるテクニックばかりを追い求めそうになる私に、伝える本来の目的に立ち返り、生活者に寄り添う姿勢を持って臨むことが大切であることを思い出させてくれます。
「Afterコロナ」の時代は、メディアの種類とその役割が変わることが予想されます。大きな変化の兆しを感じる今、ファンベースは未来のコンテンツづくりにおける重要なキーワードになる気がしてなりません。
(ふかや)
編集者の苦悩、葛藤を追体験できる一冊
【こんな人におすすめ】
・みずからの存在意義に悩む編集者
・仕事は忙しいしつらいけど、とにかくポジティブな気持ちになりたい編集者
ぽんぽこ書房 小説玉石編集部
川崎昌平著(光文社)
ほのぼのとしたキャラクターと、その絵柄とは似つかわしくないシビアなセリフ。そして、「休刊」という大きなスタンプがどんと押されている表紙が、大変印象的なコミックです。
主人公は、とある文芸雑誌の編集者。突然の休刊通告を取り消すためには、社長から出された高い目標(実売率の大幅アップ)を達成しなければなりません。
歴史ある雑誌をなくすわけにはいかないと東奔西走する主人公の姿を通し、編集者の苦悩や葛藤、そしてその先に見える一筋の希望が描かれています。
「文化の耕し手としての編集者像を何としてでも提案」するために、この本は書かれたそう。そのため、一見かわいらしい登場人物が、熱いセリフをとにかく吐きまくるのです。現役の編集者でもある作者による、1話ごとに挟まれる解説文も読み応えがあります。
日々の業務に忙殺され、「なぜ自分は編集という仕事をしているのだろう」と思ったときに読むと、きっと効果の出るカンフル剤のような一冊。
「働きマン」(安野モヨコ)、「重版出来!」(松田奈緒子)と肩を並べる、編集者お仕事漫画の名作です。
ちなみに、「ぽんぽこ書房」の作者である川崎昌平氏は「重版未定」という作品も出しています。こちらもオススメ!
(山元大輔)
「伝わる文章・伝わる言葉」の在り方を心に刻む
【こんな人におすすめ】
・「心をつかむ文章」の意味を理解したい方
・平坦な文章しか書けないとお悩みのライター・編集者
コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術
阿部広太郎(ダイヤモンド社)
職業柄、言葉にコンシャスに向き合っているほうだと思うけれど、一つひとつの言葉にかける熱量はコピーライターさんにはかなわない…と、この本を読んで感じました。
「人の心をつかむ文章とはどういうものか」についてまとめられた、作詞なども手掛けているコピーライター・阿部広太郎さんの著書。本のタイトルにもあるとおり、具体的な文章術もあるけれど、仕事として文章と向き合うにあたって、どのようなマインドセットでいるべきかの部分で、共感するところが多くありました。
例えば…
「(クライアントからの修正続きでやる気が削がれそうになったら)自分と相手が重なる色を出していこうというマインドでいる」
「対象への敬意を忘れてはいけない」
「書くのは自分のためでいいけれど、届けたい人がいるのであれば、自分勝手に書いてはいけない」
ここでただ断片を抜き出しただけでは伝わらないかもしれませんが、私がこれまでの経験の中で得てきた感覚、何となく血肉になっていたことをしっかり言葉にしてくれていて、今一度、伝わる文章の在り方を心に刻む作業をしたような気持ちです。
中でも、目から鱗というか、個人的にも「課題に感じていたことの解決法だ!」と実践するようになったのが、「よく使ってしまう言葉」対策。
「こういう気持ちのときはこの言葉」「このシチュエーションではこの言葉」など、いつの間にか自動的に使ってしまっている便利な言葉(本書では「素敵」を例にとっていました)を封印して、別の的を射た言葉を探そうというものです。
業務として文章に向き合っていると、短い時間に数をこなさなければならないことも多いもの。すると、心に宿った気持ちを突き詰めて適切な言葉を選ぶ作業は、どうしてもおろそかになってしまいます。
ただ、個人的に書いているnoteや、TwitterなどのSNSでは、じっくり言葉を選ぶことはできるはず。すると、自分の言葉の引き出しが増えて、それが業務にも活きてくるのでは…!など、自分に足りない部分について、読みながらあれこれ考える機会になりました。
どんな形であれ、文章は誰もが書くものですし、最近ではより「書く」行為が日常化している人は多くなっています。 そこで、より「伝わる」文章、人の心をつかむ文章はどうすれば生み出すことができるのかを、この本で学んでみてはいかがでしょうか?
(加藤直子 @naokokt1)
使いたい言葉がきっとみつかる
【こんな人におすすめ】
・文章表現に悩むライター・編集者・コピーライター
・SNSで気の利いた言葉を使いたい方
・語彙力を増やしたい方
ことば選び実用辞典
学研辞典編集部(学研プラス)
文章の編集中に「この場面でこの言葉は違う」と感じても、では具体的に何を使うかとなると、思いつかいことがあります。同じ単語は何度も繰り返したくないし、頭に浮かんだ単語は表現したいものとなんとなくニュアンスが違う…。そういったときに開いてみると、きっとヒントが見つかる辞典です。
「言葉選び実用辞典」が刊行されたのは2003年でしたが、2017年にTwitterでバズって改めて注目されました。
いわゆる類語辞典ですが、ウェブの類語辞典より情報が多く、従来の紙の類語辞典より端的で用例が多い点がいいです。「たずねる(尋ねる)」だけでも「喚問」「詰問」「糾弾」など31種類が掲載されていて、これだけあれば、きっと使いたいニュアンスの「たずねる」が見つかるはず。
何より、「実用辞典」の割に実用的ではない言葉が豊富な点が素敵。例えば「妻」の欄には、落語でしか聞いたことのないような「山の神」も掲載されています。
難点は、「情景ことば選び辞典」「漢字の使い分け辞典」など、シリーズが10種類もあること。読み物としておもしろいし、「全種類そろえてもいいのでは?」と考えては、スペースの都合で断念を繰り返しています…。
(せがわ)
初対面の人にモノを紹介するって、難しいですよね?
【こんな人におすすめ】
・コンテンツの企画を考える編集者
・広告やキャッチコピーを考える担当者
・本にまつわるよもやま話が好きな人
出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと 花田菜々子(河出書房新社)
数年前に話題になった本なので、ご存じの方も多いかもしれません。私がご紹介するのは、ヴィレッジヴァンガードの書店員である筆者が、人生の転機を迎えて出会い系サイトに登録し、そこで出会ったさまざまな相手に本をすすめていく…という私小説です。
タイトルに惹かれて手に取ったのですが、次々に登場する人たちのエピソードがおもしろく、スピード感のある展開で一気に読み終えました。
「人にモノを紹介する」って、難しいですよね。初対面の人ならなおさら。
当たり前ですが、人は一人ひとり違います。その人がどんなことを考えていて、どんな順番で、何を伝えれば響くのか。筆者は「読み手」のことを考え抜いて、一冊を紹介していきます。
この取り組みは、一期一会のウェブコンテンツに通じるものがあるかもしれません。ウェブは相手の顔が見えないので、読み手が何を期待してページに来ているのか、想像力を働かせてコンテンツを考える必要があります。
紙もウェブも、「企画と呼ばれるものの根っこは同じだなぁ」と再認識した一冊です。
(西 倫英 @nishi_n)
ストーリーはいつも現場に眠っている
【こんな人におすすめ】
・コンテンツマーケティングの基本を知りたい人
・SEOの基本を知りたい人
・ぶっ飛んだハードボイルドな物語が好きな人
沈黙のWebマーケティング −Webマーケッター ボーンの逆襲− ディレクターズ・エディション
松尾茂起(エムディエヌコーポレーション)
ストーリー仕立てで、コンテンツマーケティングやSEOのことがわかります。500ページ近くあるのに、スラスラ読めるのにもびっくり!
Googleのペナルティで検索順位が下がった家具店のウェブサイトを、主人公のボーン・片桐が救うのが大まかなあらすじ。
ボーンには、「お前のサイトはもう死んでいる」「俺のインデックスが加速する」と謎にテンションが高いセリフがあるのですが、一番好きなのは「ストーリーはいつも現場に眠っている」です。
ボーンが家具屋の魅力を短時間で書き上げて、読み手を感動させるときは、入念な準備をしていたことがわかります。家具の職人さんに話を聞いたり、購入者からのお礼の手紙を読んでいたりしていたのです。
今のナイルの仕事でも意識している言葉で、なるべく現場に近い情報を把握しながら、コンテンツづくりに取り組むべきだと考えています。
ちなみに、ボーンが3,000文字を完璧に仕上げるのに要した時間はわずか16分。うらやましすぎる能力です。
(高林ゆうひで @takataka578)
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