【準備編】ユーザーテストで課題を発見するための基本的な考え方と5つの準備プロセス
ユーザーテストの進め方は、大きく準備・実施・分析と段階がありますが、ユーザーテストで発見を得るためにはある程度の準備が大切です。
ユーザーテストのありがちな勘違いですが「誰かにサイトを使ってもらって感想を聞き出せばいいんでしょ?」と思われている方がもしいらっしゃったら、本記事を参考に5つのステップで準備をしてみてください。きっと目に見えて成果が変わってきますよ。
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目次
ユーザーテストとは
ユーザーテストとは、実際のユーザー(に近い人)にWebサイトを利用してもらい、その行動や発話を観察して、サイトの課題やユーザーの心理を抽出する調査手法のことです。
もっと簡単に言えば「ユーザーが使っている様子を観察する」調査手法と言えます。ユーザーテストを実施することで、これまで見えなかったユーザーの心理や、Webサイトの様々な課題を把握することができます。
簡易なやり方でも様々な発見が得られるユーザーテスト
最近では在宅の方にユーザーテストを受けていただく簡易的なリモートサービスも増えてきましたが、本格的なユーザーテストを外部委託すると必要なテストの量や期間に応じて相当の費用が必要となります。
しかし「ユーザーテスト」という手法自体はとてもシンプルなものなので、周りの人に協力してもらいながら、簡易なやり方で実施することができます。簡易なテストでも多くの新しい発見が得られますので、是非本記事を参考に取り組んでみてください。
※参考:【これから試したい方向け】ユーザーテストの概要とそのメリット
ユーザーテストの大まかな流れを知る
ユーザーテストにあたっては、まず全体の流れを把握しましょう。
参考までに弊社が行う際の流れの一例をご紹介します。(未経験の方には難しく感じるかもしれませんが、簡易であれば一つ一つはそれほど難しくないので是非実施してみてください)
ユーザーテスト全体の流れ(一例)
テストの設計(※本記事の範囲です)
- サイトの目的やビジネスモデルを確認する
- ターゲットユーザーの属性とニーズを把握する
- 「ユーザーの行動シナリオ」を仮説として用意する
- ターゲットユーザーに近い被検者を集める
- テストのタスクを用意する
ユーザーテストの実施(※実践編をご参照ください)
- 被検者に対し、適切な状況設定を行う
- 被検者にタスクを依頼し、実行・思考発話してもらう
- 適宜質問を繰り返し、ユーザー行動の裏側の心理を探る
ユーザーテスト後の分析
- テスト結果を振り返り、ユーザー心理やサイト課題等の発見点をまとめる
- 「ユーザーの行動シナリオ」の仮説を見直し、次のタスクを設計する(繰り返す場合)
上記がユーザーテストの全体像です。テストは実施後の分析が大事ですので、何のためのテストなのかを準備段階でハッキリさせましょう。
では、準備について5つのステップでご紹介させていただきます。
準備1:サイトの目的やビジネスモデルを確認する
ユーザーテストにあたりまず確認したいのは、「Webサイトのビジネス上の目的」です。
ECのように物を売って収益を上げるのか、お問い合わせや資料請求に繋げるのか、サービスや会社の認知やブランディングをしたいのかなど、目的次第でターゲットとするユーザーや、サイトの改善方針は変わってきます。
ですのでまず最初は、「運営者がそのサイトで何を成し遂げたいのか」を再確認しましょう。そうすることでユーザーテストの内容がぶれず、その後のサイト改善方針も明確に立てやすくなるでしょう。
サイトの目的をはっきり意識しないままなんとなく運用しているケースもあるかもしれませんが、Webサイトをより良く改善していく上ではとても大切な要素です。
準備2:ターゲットユーザーの属性とニーズを把握する
続けて「ターゲットユーザーの属性とニーズ」を確認しましょう。そもそも、そのサイトを利用するのはどんな人なのか?どのようなニーズで、どのようにサイトにやってくるのか?といったことをできる限り明らかにします。
いくらサイトの目的が明確でも、利用するユーザーのニーズに合致しなければ使ってもらえません。「ビジネス上の目的」と「ユーザーのニーズ」を上手くすり合わせていくことが、サイトを改善していく上でとても重要なことです。
ユーザーニーズを把握する方法
ユーザー像やユーザーニーズを把握する方法としては、下記のようなものが挙げられます。
- サービス考案者や事業代表者(運営者)にヒアリングする
- 普段ユーザーと接している社員(営業やカスタマーサポートの方など)にヒアリングする
- アクセス解析を用いて、ユーザーの属性や流入経路、検索キーワードなどを分析する
- アンケート調査を実施する
- サービスの現地調査を実施する
ユーザーニーズを把握する方法は様々なものがあり、完璧に行おうとすると多大なコストや時間が掛かります。多くのWeb担当者はコストや時間をそれほど掛けられないと思いますので、ある程度の仮説が立てられれば切り上げてよいかと思います。
(補足)ユーザーニーズはユーザーテストでわかることもある
実はこれから実施するユーザーテストは、ユーザーニーズを確認するための有効な手段でもあります。
準備段階で考えていたユーザーニーズの仮説が、ユーザーテストを実施すると全然違うことに気づくこともよくあります。(運営主が期待していたことを、ユーザーは求めていなかったなど)
仮説が覆されることもありますがそれこそがユーザーテストの良さですので、テスト前の段階では自分なりの仮説を持つことを大事にして、テストを通して確認してみてください。
準備3:「ユーザーの行動シナリオ」を仮説として用意する
次に、ユーザーがサイトを利用して目的を達成するまでの理想的な行動と心理の流れとして、「ユーザーの行動シナリオ」を考えます。
ユーザーはサイト内外を動きまわり、様々な心理変化を経て目的を達成したり諦めたりします。
ですのでサイト上での目的達成を促すためには、ユーザーの一連の行動と心理変化(=シナリオ)を最適化する必要があります。
ユーザーの行動シナリオを考える際は、行動フェーズごとにユーザーがどのようなことを感じるか、欲するかなどの心理状態も併せて考えましょう。(図のように書き起こすとよいです)
またWebサイトをそのシナリオ通りに使ってみて、どんなところが問題になりそうか、良い影響を与えそうかなども予め仮説立てておきましょう。
テストを実施する時はシナリオを意識しよう
ユーザーテストは、こうしたシナリオを仮説として持っているか否かで発見点の精度が大きく変わります。
ただ漠然とユーザーを観察するのではなく、「仮説のシナリオ通りにユーザーは行動するか」「シナリオから外れてしまった原因は何か」など、シナリオと照らし合わせて観察とインタビューを行うことで、よりクリティカルな発見が得られやすくなり、発見後の分析も行い易くなります。
準備4:ターゲットユーザーに近い被検者を集める
ここまでの流れで、サイトのターゲットユーザーがある程度見えてきていると思います。
ターゲットユーザー像が明らかになったらなるべく近い被検者を集めましょう。身内や知り合いに該当者がいるのであればそれでも構いません。モニター会社などを利用すれば、費用は掛かりますが身の回りには中々いないような条件に合致するユーザーが見つかることもあります。
被検者選定はユーザーテストの肝となる部分ですので、想定したターゲットユーザー像になるべく近い被検者を集められるように集めることが望ましいですが、該当する被検者が見つからないからと諦めていては発見がゼロになってしまいますので、初めての場合は簡単な条件を満たしているだけの人でも良いので、まずはやってみることをお勧めさせていただきます。
被検者の属性や人数の考え方
例えば、歯医者の情報サイトであれば「虫歯治療や検査のために歯医者をインターネットで探したことがある人」や、不動産賃貸サイトであれば「賃貸物件の比較をインターネットで行ったことがある人」などでも初めてであれば十分な発見が得られると思います。
ただし、既にユーザーテスト対象のサイトを使ったことがある人の場合は、既にサイトの操作性やコンテンツを把握できている可能性があるため、被検者の対象からは外したほうがよいです。「自社のスタッフでやってみよう」という場合はご注意ください。
(自社スタッフや関係者の場合、テストに対して素直な心理を声にできない可能性があるため、できれば第三者で実施したほうが良いです)
なお被検者の人数は、1つのターゲットユーザー像(1つのテスト)につき5人ほど集めると良いでしょう。10人20人も同じテストを繰り返しても発見が重複してくるため、5人程度でも十分な数の発見を得ることができます。
※人数と考え方について具体的に知りたい方は、ヤコブ・ニールセン博士の記事(翻訳)が参考になります。
参考:5ユーザーでテストすれば十分な理由 | U-site
準備5:テストのタスクを用意する
ユーザーテストの基本的な流れは、「ユーザーにタスク(作業)を実行するように依頼し、ユーザーがタスクを実行する過程を観察する」というシンプルなものです。ゆえに「ユーザーに実行してもらうタスク」の設計は非常に重要です。
一方でタスク設計の精度は経験に左右されるところも多く、最適な設計をすることは最初はなかなか難しいものです。下記でご紹介するタスク設計の2つのポイントを守れば、発見に繋がるタスクにすることができますので、ぜひご参考ください。
ポイント1:サイトの目的・ユーザーの行動シナリオのゴールを意識する
1つ目のポイントは、本記事の1や2で定義した「サイトの目的やユーザーの行動シナリオに沿ったタスク」にすることです。
例えば、購買させるという明確な目的がある通販サイトで「自由にサイトを使って感想を教えてください」などをタスクにしても目的のない行動になってしまい、有益な発見は得られません。
「このサイトで◯◯を探して、気に入ったものがあれば購入に進んでください」といった、サイトのゴールを前提としたユーザーの行動シナリオに沿ったタスク(この場合は商品購入)にすることで、ユーザーはどこでつまづくのか、なぜモチベーションを下げてしまうのかなどの発見が得やすくなります。
ポイント2:事前にインタビューして被検者に合った前提条件をセットする
2つ目のポイントは、被検者が「実際の利用状況に近い形で自然に利用できるようにする」ことです。
例えば、エアコンを欲しいと感じていないユーザーに「好きなエアコンを探して、購入してみてください」といったタスクを設定しても、そこにユーザーニーズは存在しないので、強制されているだけで普段の使い化や探し方にはなりません。
この場合は、事前に「最近欲しい家電はありますか?」などインタビューを行い、その答えに応じて「ではその家電の購入を検討しているとして、この通販サイトで商品を探してみてください」などの、被検者ごとにカスタマイズしたタスクを依頼するとテストの質が高まります。
このように、タスクを依頼する前に被検者のリアルな生活状況や趣味嗜好をインタビューしたほうが良いですので、事前インタビューの項目も予め準備段階で考えておきましょう。被検者を選ぶための条件も、このインタビュー内容を考えると明確になってくると思います。
タスクの一例
- 飲食店情報サイトの場合:
「宴会幹事の前提で、20人が集まる宴会の会場を探して予約してみてください」 - 求人サイトの場合:
「転職活動を行っているつもりで、自分が一番興味をひかれる求人を探して、見つかったらお問い合わせしてください」 - 通販サイトの場合:
「◯◯なスペックのPCを買おうとしているつもりでPCを探してみてください。気に入ったものがあれば購入を進めてみてください」
まとめ
ここまでユーザーテストの準備段階について説明しましたが、「サイトの目的を確認する」「ターゲットユーザーを把握する」といったことはユーザーテストをするしないに関わらず重要なことですので、一度しっかり考え直してみることをお勧めします。
ユーザーテストを実施することでそれが覆されたり、思いもよらない発見が生まれるかもしれませんが、それがユーザーテストの醍醐味です。これまでなんとなく実施されていた方は本記事を参考にしてみてください。
準備が出来たら、いよいよ実践編です。【実践編】ユーザーテストの進め方をご参照ください。
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