メジャーリーグ行きが決まった大谷翔平選手に学ぶ「急がば回れ」
※本記事は、2018年公開当時の情報を基にした記事です。
コンテンツマーケティングは結果が出るまでに時間がかかるため、よくマラソンに例えられます。長期戦ゆえに、ネタ切れ、投資対効果、社内圧力、売上目標、制作費、リソース確保など、難題が次々と立ちはだかります。ですから、目標設定をきちんと決めないで走り出すと、「これ、何のためにやってたんだっけ?」と、途中で迷走したり、頓挫したりします。
そこで今回は、コンテンツマーケティングを実施して、途中で挫折しないための目標設定の仕方についてお話ししたいと思います。
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目次
大谷翔平、メジャーリーガーへの道のり
今シーズン、メジャーリーグのロサンゼルス・エンゼルスへの入団が決まった北海道日本ハムファイターズ(以下、日本ハムファイターズ)の大谷翔平選手。高校卒業後の2012年、メジャーリーグ行きを宣言していたものの、日本ハムファイターズが強行指名をして、球界を騒然とさせました。
当初、日本ハムファイターズからの指名に困惑ぎみだった大谷選手の気持ちを変えたのは、「大谷翔平君 夢への道しるべ」と題したプレゼン資料でした。
提案のストーリーや選択肢、メリットの提示など、非常に綿密に練られた内容の提案書です。
相手の立場に立った目標設定
提案書は「ユーザー第一主義」を貫いた、まさにコンテンツマーケティングの考え方を具現化したものです。
まず提案書では、日本ハムファイターズについては一切ふれていません。つまり、一方的に「日本ハムファイターズはこんなにいい球団だよ!」とは、まったくアピールしていないのです。メジャーリーグを切望している大谷選手にとって、日本のプロ野球チームがどれだけ自球団をアピールしたところで、さほど興味は持たなかったことは想像に難くありません。では、大谷選手が最も興味・関心を抱くことは何でしょうか。
それは「メジャーリーグで成功する」ことです。
提案書では、これまで高卒でメジャーリーグに挑戦して成功した選手が、いかに少ないかという詳細なデータを提示しています。日本からプロ野球を経ずにメジャーリーグを目指した選手は50人以上いますが、その中からメジャーリーグで活躍した選手はほぼ皆無です。また、早くメジャーリーグに行ったからといって、必ずしも長年活躍できるとは限らない。むしろ、自己が確立した30歳前後で行くほうが、長年活躍している選手が多いことが記されています。
※別紙資料より抜粋
最短の近道は「急がば回れ」
そして、この提案資料の半ばで出てくる琵琶湖の写真と、「急がば回れ」のことわざ(文藝春秋「Number」820号参照)。
急がば回れは、室町時代の連歌師・宗長が詠んだ「もののふの 矢橋(やばせ)の船は 速けれど 急がば回れ 瀬田の長橋」が由来となります。
これは、琵琶湖を横断するときの手段のことを指しています。矢橋は、滋賀県草津市矢橋港~大津市石場港を直線で結んだ水路のこと。瀬田の長橋は、日本三大名橋のひとつである「瀬田の唐橋」のことです。
当時は京都へ向かうのに、矢橋から琵琶湖を横切る水路のほうが、瀬田の唐橋を通る陸路よりも近かったものの、比叡山から吹き荒れる突風が危険だったことから、このように詠まれたそうです。
「夢を叶えるためには、水路を漕ぎ出て直接メジャーリーグに向かうほうが近道に見える。しかし、日本のプロ野球という、一見遠回りに思える陸路を通ったほうが、結果的には近道」と、その提案書は訴えます。
メジャーリーグは、どんなに有望なドラフト1位のルーキーでも、ほとんどがマイナーリーグからスタートします。日本のプロ野球のように、1年目から一軍に合流することはまずありません。
最初から「メジャーリーグで活躍したい」という大谷選手に、慣れない外国できびしい環境(金銭、住環境、移動手段、練習など)のマイナーリーグで数年苦労するより、少し時間をかけてでも、日本で実績を残してメジャーリーグに行ったほうが、遥かに好条件で活躍するチャンスがあると訴えたのです。
日本ハムファイターズは、メジャーリーグを琵琶湖の水路に例え、大谷選手にとって、最善の選択は陸路であると説得したのです。
コンテンツマーケティングは遠回りの陸路
コンテンツマーケティングは、この「急がば回れ」の陸路といえます。
一見、遠回りですが、コンテンツマーケティングは、一方的に「うちの商品はいいよ!」と広告を出してアピールすることでも、記事を大量生産して、急いで検索流入を増やす施策でもありません。
コンテンツマーケティングは、ユーザーの視点に立って、ユーザーにとっての最大のメリットが何であるかを伝え続け、ユーザーと信頼関係を築くことなのです。
運が良ければ、水路で無事目的地に早くたどり着くかもしれません。しかし、陸路の道中なら、さまざま人に出会ったり、想像していなかった思わぬ発見があったりするかもしれません。
ユーザーの声に耳を傾けてコミュニケーションを図り、ユーザーの要望に応えて期待している解決策を提示し、信頼関係を築いていくのです。
みずからの目標をマンダラチャートで設定
日本ハムファイターズが「ユーザー目線」で、目標設定を掲げた一方、大谷選手自身も高校時代に、みずから「マンダラチャート」というユニークな方法で目標設定をしていたのは有名な話です。これは、コンテンツマーケティングを実施する上でも、とても参考になります。
マンダラチャートは、3×3の9マスの枠で構成される目標達成のためのフレームワークです。1979年にクローバ経営研究所代表の松村寧雄氏が考案したもので、事業計画や企画作成、勉強、スポーツの練習など、あらゆるシーンに応用できるため、広く活用されています。
※スポーツニッポンの写真を基に編集部で作成
大谷選手は、真ん中のキーワード(最終ゴール)を「8球団からドラフト1位指名」としていました。これは、かつて野茂英雄選手がドラフト1位指名を受けた、史上最多の記録です。そして、8球団からドラフト1位指名を達成するためにすべきことを、「体づくり」「コントール」「キレ」「スピード160km/h」「変化球」「運」「人間性」「メンタル」と埋めていったのです。そして、「運」という目標を達成するために、「あいさつ」「ゴミ拾い」「部屋そうじ」「審判さんへの態度」「本を読む」「応援される人間になる」「プラス思考」「道具を大切に使う」と、みずからのタスクを拡張していきます。
※スポーツニッポンの写真を基に編集部で作成
一見、野球とは直接関係ない小さなKPI(主要業績評価指標)かもしれませんが、大谷選手はこれを高校1年生のときからコツコツと積み上げていったのです。高校卒業時からの、大谷選手の十代とは思えないしっかりした「大人な立ち振る舞い」は、こうした努力の積み重ねで培われてきたように思えます。
結果、日本ハムファイターズに入団した大谷選手は、日本のプロ野球界で前人未到の「二刀流」として活躍し、今年、いよいよ念願のメジャーリーグに挑戦します。今後、彼がどんな活躍をするか、多くの日本人が期待に胸を膨らませているに違いありません。
大谷選手のこれまでの活躍とこれからの期待感は、「ユーザー第一主義」を貫いて、彼に「急がば回れ」を決意させた日本ハムファイターズのプレゼン資料も、決して無縁ではないでしょう。
イラスト:タナカケンイチ
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