CEO篠塚氏インタビュー ―「relux」の成長を支えるグロース意識と改善事例の数々―
グロースと聞いて頭に浮かぶ日本発のサービスが、一体どれだけ存在するだろうか。
iQON、nanapi、Pixiv、Boketeなどが注目を集める一方で、実はまだまだグロースに本格的に取り組むスタートアップとして認知度を高めていない企業も複数存在する。その1つが、オンライン宿泊予約サービス「relux」を提供するLoco Partnersだ。
本日は、株式会社Loco Partners CEO 篠塚 孝哉氏とのインタビューを基に、reluxのグロースの一端をお伝えしたい。「数値で会話する」と豪語する篠塚氏のグロースに対する姿勢は、「グロースハック」に関心を寄せる全ての読者に取って必見の内容になるはずだ。
マーケティングでお悩みの方へ
reluxとは
サービス名の「relux」とは、「relax(安らぎ)」と「luxury(贅沢)」を掛け合わせた造語である。
その名が示す通り、満足度の高い一流施設だけを厳選し、ハイクオリティな安息を提供するreluxは、ローンチ以降急速な成長を見せ続けている。(以下グラフを参照)
オンライン宿泊予約サービスという既存ビジネスで成功した背景に、高級旅館への特化や満足度保証サービスがあったことに疑いはない。しかし、reluxの成長を語る上で見過ごせないのは、篠塚氏を筆頭にLoco Partners全体に浸透するグロースに対する飽くなき追究心だ。
Loco Partnersに根付くグロース意識
-日本にはサービスのグロースを十分に意識したエンジニアが少ないと言われる中、Loco Partnersは、篠塚氏を中心に早くから高い意識を持ってグロースの促進に取り組んできたと伺っています。その背景についてお聞かせください。
今でこそグロースハックという言葉がバズワードとして注目を集めていますが、私からすれば高速のPDCAサイクルという認識で、何も新しいことだとは考えていません。PDCAサイクルを素早く回していくことに関しては前職のリクルート時代から意識して行っていましたし、Loco Partnersの成長に関する考え方も、その延長線上にあります。
前職時代と今で1つ違いがあるとすれば、「連れてきて(PR・集客)、動かす(サイト内遷移・コンバージョン)」という考え方から、AARRRに基づいてグロースを考えるようになったことですね。
-篠塚さんが予てより培ってきたグロースに関する意識と経験は、Loco Partners全体にも浸透し、運営体制にも反映されているのでしょうか。
現在は、私、エンジニア、デザイナーを含む6名を中心としたグロースチームを形成しています。改善箇所や施策内容によってメンバーは入れ替わりますが、それぞれが高い意識を持ってサービスの成長促進に取り組んでいます。
データ解析に関しては、(Javascriptに依存しているため、あまり正確ではない)グーグルアナリティクスのデータだけに頼るのではなく、自社製解析ツールのデータと併せて、取れる限りのデータを採取しています。
データが全てという意識は全メンバーの中に共通していて、数字でしか会話しない文化が出来ていますね。
グロースへの取り組み
-reluxのウェブサイトや各種マーケティングチャネルを拝見して、最も興味深かったのはリテンション最適化にまつわる施策でした。特にFacebookページ運用は、Facebookが自社サイトで特集を組むほどの成果を見せていますね。
現在までにページに対するいいね!数は100,000を超えていて、各投稿に対するいいね!やシェアの数も1,000を超えるケースがほとんどです。集客の7割はFacebookページを経由していて、reluxのユーザー獲得とリテンションを支える最も重要なマーケティングチャネルと言えます。
Facebookはオーガニックでファン数を増やすことが比較的難しい媒体なので、ローンチ当初はある程度大きな額の広告費用を割いていました。Loco Partnersはrelux以外にもコンサルティング及び広告代理事業を展開しているため、ローンチ当初はそこで得た収益をreluxのFacebook広告費用に回し、ユーザーベースを拡大していきました。各投稿に対しては広告を寄せていませんが、Facebookページのファン拡大のためのいいね獲得(LikeAd)、サイトへの直接誘導をするための広告運用(DarkpostAd)は現在も継続して行なっています。
-Facebookページを効率的に運用する為に、具体的にはどのような改善サイクルを回したのでしょうか。
ファン数の変化や季節的な要因もあり、単純に因果関係を追跡することは出来ませんが、出来る限りお話出来ればと思います。
reluxがFacebookページを運営する上で意識している項目は、写真、文章、投稿形式、投稿のタイミングなど様々です。
写真に関しては、部屋、お風呂、料理、空間(内装、廊下)、おもてなし(旅館の従業員)の5種類に分類して、どの系統の写真がユーザーの興味を引き付けるのか、定量的に計測しています。例えば旅館の仲居さんの写真を掲載したときはユーザーからの反応がいまいちだったり、検証作業を行って初めて気づくことも多々あります。
(色とりどりの写真から、投稿画像へのこだわりが伺えます。)
文章ももちろん大切で、投稿文の長さがいいね!、シェア、リンクのクリック数にどのような影響を与えるか、検証を繰り返しました。文章が長い方がシェア率は高まったのですが、いいね!やクリック数は伸びないことを突き止めて、現在は文章を一行に絞っています。
文言も気にかけてはいますが、ユーザーはあまり文章そのものに注目していないようで、基本的にはインターンが文章作成を行い、投稿しています。文章の作成に時間と手間がかからないので、その分費用対効果は非常に高いです。
(以前は長めの文章を挿入)
(検証・改善の結果、現在は比較的簡潔な文章を挿入)
他にも、reluxでは投稿形式にも焦点をあてて検証作業を行いました。多くのサービスは投稿形式を意識せずに、写真を投稿して文章内にURLを挿入する形式を取ることが多いのですが、reluxの場合、写真の投稿よりもリンク投稿の方がクリック率(サイト誘導率)が高いことをデータから突き止め、リンクプレビューを中心とした投稿が現在では主となっています。
(画像投稿)
いいね:3,278
コメント:23
シェア:88
リーチ:46,800人
リンクのクリック: 545
(リンク投稿)
いいね:2,862
コメント:6
シェア:1
リーチ:33,488人
リンクのクリック:1,389
こんな風に細部にこだわってFacebookページの改善サイクルを回していますが、最終的には「本気で取り組んでいるかどうか」ということに落ち着くのではないかと思います。全体の戦略の問題でもありますが、Facebookページは片手間で運用しているサービスがまだまだ多いのが現状ですからね。
-Facebookで取り切れないユーザー層に対しては、どのような対策を行っているのでしょうか。
Facebookページの運用以外では、メールマガジンに力を入れています。配信日時、text/html、タイトルなどを変えてPDCAサイクルを回し、現在までに数十のパターンを試しましたね。
詳細は是非公開中のスライドをご覧ください。
画像で見るreluxメルマガ検証の過程
本項では、「温泉」ジャンルに絞ったreluxのメルマガ改善プロセスを画像と共にご紹介致します。詳細は、各画像をクリックしてご覧下さい。
①
メールマガジン名: 寒い冬にこそ訪れたい温泉宿4選
配信日: 2013/12/27
曜日: 金
形式: HTML
CTR: 3.96%
初期のメルマガ仕樣:
・テーマに対して、4旅館を厳選
・写真/旅館タイトル/「プランを見る」ボタンはすべてクリッカブル
②
メールマガジン名: 関東近郊で露天風呂付き客室に泊まる
配信日: 2014/1/31
曜日: 金
形式: HTML
CTR: 8.33%
意識した改善点:
・エリアを絞ることで各指標に影響があるかを検証
・タイトル付のトップ画像を追加
結果:
GOOD:
・CTRが改善
BAD:
・クリックがトップ画に集中
・BAD:トップ画にデザイン工数がかかる
③
メールマガジン名: 大人の贅沢!源泉掛け流しの<湯宿>に泊まる
配信日: 2014/2/16
曜日: 日曜日
ジャンル: 温泉
形式: HTML
CTR: 4.00%
意識した改善点:
・工数削減案として、テキストのトップビューをテスト
結果:
GOOD:
・1本あたりの工数削減に成功、週に2度配信できる体制を構築
・各旅館にクリックが均質化
BAD:
・全体CTR悪化
全体的に意識している点:
・メルマガを通じてどうカスタマーと関係性を築けるのか→心地良いメルマガの追求
・旅行トレンドとの相関があり、一概に各施策の良し悪しを言い難い点があるため、慎重なテストが必要
reluxの未来
-最後に、reluxの今後の展望をお聞かせください。
直近では、会員登録数の増加が最大の目標です。現在の3万人から、6月までに5万人、12月までに15万人の会員を獲得するために様々な施策を考案しています。
スマートフォンからのトラフィックが全体の7割を占めている一方で、予約は3割ほどしかないという課題も抱えているため、この部分の無駄をカットする為に、近々専用のアプリを出す予定でいます。それに併せて掲載旅館数もどんどん増やしていきたいですね。
振り返って
「数字で会話する」という言葉がとにかく印象的だった、Loco Partners代表篠塚氏とのインタビュー。インタビューの中でも、随所にデータの見方や使い方に対するこだわりが見受けられた。
reluxが誇るグロースチームの一角を担い、本インタビューの企画準備にご協力頂いた門奈剣平氏の姿勢を見ても、グロースに必要な風土がLoco Partners全体に浸透していることは明らかであり、「贅沢という言葉をきいたときに、大切な人と一緒に過ごす時間や、人とふれあって感動することが、まず最初に連想される国にしたい」という企業理念の実現に社内が一体となって邁進している様子が伺えた。
国内外を問わず競合がひしめく宿泊業界の中で、今後も著しい成長を期待させるrelux。貴重なお時間を縫って、インタビューにご協力頂いた関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
マーケティングでお悩みの方へ